2024年12月10日(火)

家庭医の日常

2022年9月23日

 今年の初夏、5年ぶりに英国ロンドンへ行ってきた。エリザベス女王がまだお元気で、即位70周年を祝う「プラチナ・ジュビリー」のにぎやかな行事がひとしきり終わって、多くの国民が熱狂するクリケットの国際試合の季節になっていた。

「久しぶり!元気だった?」

「元気だよ。また会えてうれしいね」

 滞在中、毎日何回となくこんな挨拶を交わした今回の渡英の目的は、2022年3月の『危機のウクライナで奮闘する家庭医 広がる支援の輪』でも紹介した、世界各国の家庭医学会が加盟している国際学会のヨーロッパ地域学術総会に参加するためだった。毎年開催されていたこの総会はコロナ禍で1回の延期と2回のバーチャル開催(オンライン参加のみ)を経て、3年ぶりの対面開催となり、参加者の気持ちも盛り上がっていた。

(Visoot Uthairam/gettyimages)

世界家庭医機構「WONCA」とは

 ほとんどの会員がこの学会のことをWONCA(ウォンカ)と呼ぶ。これは学会の正式名称の最初の5つの単語の頭文字に由来する。正式名称は長くてすべての学会員が覚えているわけではないが、たまにはフルスペルで書いてみよう(忘れないように)。

 The World Organization of National Colleges, Academies and Academic Associations of General Practitioners/Family Physicians

 さすがに長いので、短いバージョンとしての「World Organization of Family Doctors」がよく使われており、日本ではこれを訳して「世界家庭医機構」と呼んでいる。

 「家庭医」を表す英語は世界にさまざまあり、それぞれに歴史的な背景や由来があるが、WONCAでは世界で多くの人々に使われている「General Practitioner」と「Family Physician」の複数形を学会の名称に使用している。

 「General Practitioner」は英国が起源で、その影響を受けたヨーロッパ、豪州、ニュージーランド、南アフリカなどで用いられている。一方、「Family Physician」は北米を中心に、その影響を受けたアジア諸国で用いられることが多い。

 ちなみに北米ではphysicianはすべての臨床医を表す一般名であるが、家庭医として「General Practitioner」を使用する国々では、多くの場合physicianは内科医を意味する言葉として使用される。内科医とは異なる独立した専門性を持つ家庭医の名称の一部にphysicianを用いることに違和感を感ずる人たちがいることは事実だ。

 1972年に世界18カ国の家庭医が集まって創立されたWONCAは、現在では世界の110の国と地域の132の家庭医学会が加盟し、総会員数は約50万人である。そのWONCAでは、自らの専門領域の医師の名称として、「General Practitioners」も「Family Physicians」も使用することを支持しているが、一つの言葉を使用する場合には「Family Doctors」を推奨している。


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