2022年12月10日(土)

家庭医の日常

2022年9月23日

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葛西龍樹 (かっさい・りゅうき)

福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座主任教授

1984年北海道大学医学部卒業。北海道家庭医療学センター設立および所長を経て、2006年から現職。英国家庭医学会 最高名誉正会員・専門医(FRCGP)。日本プライマリ・ケア連合学会監事。著書に『医療大転換 ─日本のプライマリ・ケア革命』(ちくま新書)など多数。

 日本ではほとんど知らされていないが、関係する産業全体を含めると、実は医療保健セクターが地球上で5番目に温室効果ガスを排出している。

 風邪での抗菌薬処方など不必要な薬剤と検査の使用を減らしたり、喘息などで処方される吸入器のリサイクルを進めたり、栄養、運動、瞑想、ヨガなどを含む生活習慣アドバイスをするといった、家庭医が自分たちの診療拠点と地域からプラネタリーヘルスを広めていくことが推奨された。

 WHOの予測では、2030年から50年の間に気候変動によって毎年25万人の死亡が増え、健康への直接的損失は年間20億〜40億米ドルになるという。日本でも具体的な取り組みを進めなければならない。

 WONCAに加盟する日本プライマリ・ケア連合学会の若手会員の中にプラネタリーヘルスを志向するグループがあるので、今後WONCAなどの国際ネットワークを活かして活動を発展させることを期待したい。

世界と交流する若手家庭医への期待

 国際学会へ参加してとりわけ嬉しいのは、今まで私が多少力を入れてきた国際交流事業の「成果」を実感することだ。今回の場合、私たちが創設した日本と英国の若手家庭医の短期交換留学制度でかつて日本に訪れたことがある英国家庭医たちとの再会である。

 トムは8年前にこの交換留学で福島県内の私たちの専門研修プログラムを訪問して、すっかり日本が気に入ってしまい、翌年にも自費で来日したほどだ。今では国際共同研究も進めるアカデミック家庭医に成長している。アンは、今では英国家庭医学会のジュニア国際委員会を率いて、コロナ禍で国境をまたいだ移動が制限される状況下にもかかわらず、若手の国際交流の振興に尽力している。

 嬉しいことに、英国家庭医学会の国際委員会が、私の学会参加に合わせて、コロナ禍で対面での交流が中止されていた若手家庭医の交換留学プログラムの再開について話し合うミーティングを開いてくれた。やはり実際に会って話すことでそれぞれの思いがより良く理解できて、今後の具体的な方向性を明確にすることができた。

 このミーティングがキックオフとなって、その翌月には日本側の若手家庭医メンバーも参加してオンラインのミーティングが開催され、現在、再開へ向けての具体的な準備が進められている。資金面での課題はあるが、プラネタリーヘルスを志向する若手家庭医の地球規模の取り組みに、社会的な理解と支援が進むことを願っている。

  
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