2024年7月16日(火)

家庭医の日常

2023年4月29日

喘息診断の難しさ

 詳しい話はまた別の機会に譲るが、実は喘息を正確に診断することは思いの外難しい。

 喘息の診断は、臨床症状の評価と客観的な検査データに基づいて行われる。しかし、症状は変化・変動することが多く、症状があっても検査データが正常だったり、検査データに変動がほとんどない患者もいる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)など類似の症状を呈する疾患もある。

 どの客観的検査をどう使用するかについて、専門家の間でも議論が多い。たとえば英国では、NICE(National Institute for Health and Care Excellence)とBTS/SIGN(British Thoracic Society/Scottish Intercollegiate Guidelines Network; 英国胸部疾患学会とスコットランドの学会横断的ガイドライン機関の共同体)で異なったアプローチを推奨している。

 NICEは、喘息が疑われる場合、客観的な検査を積極的に使用するように推奨している(例:17 歳以上では、呼気一酸化窒素、呼吸機能検査、気管支拡張薬の可逆性検査、ピークフローモニタリング、ヒスタミンまたはメタコリンによる直接気管支チャレンジテストへと進む)。

 一方、BTS/SIGNガイドラインは、臨床症状をより重視している。客観的な検査は喘息の可能性に影響を与えるが、それ自体で診断を確定しない。構造化された臨床症状の評価に基づいて喘息の可能性を見積もり、可能性が中程度または高い患者を対象に、治療を開始しつつ症状の変化を慎重にモニターしていくアプローチだ。喘息のケアに関しては、BTS/SIGNガイドラインの方が英国のGP(家庭医)により支持されているような印象がある。

喘息の薬物療法

 今日、T.M.さんの『アクト』は23点だった。この4週間で、軽いゼーゼーで夜中に目が覚めたことが1回あったので、コントロールが「完全にできた」ではなくて「十分できた」という自己評価になった。

 ほぼ良好な状態が続いているので、私はT.M.さんと喘息ケアの次のステップについて話し合うことにした。

 喘息の薬には多くの種類がある。

 定期的に使用して喘息の原因となっている炎症を抑えるために使用する薬は「長期管理薬(コントローラー)」、発作を速やかに改善するために使用する薬は「発作治療薬(リリーバー)」と呼ばれる。

 コントローラーには、炎症を抑える副腎皮質ステロイド薬(吸入・経口)、気管支を広げる長時間作用型β₂刺激薬(吸入・貼付)、その両者を含んだ配合剤(吸入)の他、気管支の収縮を抑えるロイコトリエン受容体拮抗薬(経口)と長時間作用型抗コリン薬(吸入)、作用時間の長いテオフィリン徐放製剤(経口)、その他の抗アレルギー薬などがある。

 リリーバーには、主として短時間作用型β₂刺激薬(吸入・経口)が使用されてきたが、症状に応じて副腎皮質ステロイド薬(吸入・経口)も併用される。

 薬物療法は、臨床症状と必要な検査データを含めて現状を把握した上で、これらの薬剤を組み合わせて段階的に進めていくことになる。


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