2024年4月25日(木)

家庭医の日常

2023年5月25日

食物アレルギーは何歳に多いのか

 日本のアレルギーを専門とする医師らの協力で17年に実施された、医療機関を受診し原因となる食品が特定されている患者4851人の調査によると、食物アレルギーの年齢分布は、0歳が31.5%、1歳が18.0%、2歳が10.1%であり、2歳までが59.7%を占めた(年齢階級ごとの四捨五入の影響で合計が一致しない)。さらに、6歳以下で80.5%、11歳以下で90.7%、18歳以下で95.5%を占めた。食物アレルギーがほぼ乳幼児に起こる疾患であることがわかる。

 食物アレルゲンと呼ばれる食物アレルギーを引き起こす物質は、主として食品に含まれるタンパク質である(花粉やラテックスなど、食品以外が原因となる食物アレルギーもあるが、話が複雑になってくるので今回は割愛する)。

 原因となる食品は、年齢群ごとに大きく異なっており、0歳群で鶏卵(55.6%)、牛乳(27.3%)、小麦(12.2%)が圧倒的に多いが、1〜2歳群では鶏卵(34.5%)、魚卵類(14.5%)、木の実類(13.8%)、3~6歳群では木の実類(32.5%)、魚卵類(14.9%)、落花生(12.7%)、7~17歳群では果物類(21.5%)、甲殻類(15.9%)、木の実類(14.6%)がそれぞれベスト3だった。

 鶏卵、牛乳、小麦、大豆に対するアレルギーは、一般に幼小児期に症状が収まっていく。一方、落花生、木の実、魚介類に対するアレルギーは、しばしば大人になってももち続けることが多い。

「エコチル調査」で見えた〝親の懸念〟

 以上、食物アレルギーの基本的なことを知ってもらったところで、話を「エコチル調査」に戻そう。

 「エコチル調査」は、子どもの成長発達に影響を与える環境要因を解明するために、全国15地域で合計10万組の親子を登録して、妊娠初期の妊婦が出産してその子どもが13歳になるまで、健康状態を定期的に調べる大規模な出生コーホート(集団を追跡する)疫学調査である。

 現在までに「エコチル調査」によって多くの知見が得られているが、中でも私がM.N.さんへ伝えたかった興味深い調査結果とは、乳幼児に特定の食品をいつはじめて食べさせたかについての食品別アンケート調査の集計である(現在入手できるのは、14年11月30日時点の回答に基づく暫定的な結果)。

 それによると、鶏卵や牛乳のように、一般的に食物アレルギーの原因となることが多い食品について、親が子どもへの食べさせはじめを遅らせる傾向が見てとれるのだ。

 例えば、米(おかゆ、せんべいなどを含む)の場合、生後9カ月より前に99%の子どもに食べさせていたが、鶏卵(卵ボーロ、パンなどを含む)を含む食品の場合、9カ月時点では46%が食べさせていなかった。牛乳(ヨーグルト、チーズなどを含む。粉ミルク類は除く)では、9カ月時点では54%が食べさせていなかったのである。

「この親たちの気持ちはよーく分かります。私もK.N.(上の子)が卵のアレルギーだったんで、G.N.(下の子)に卵を食べさせるのが怖かったんです。だから先生によく相談しましたよね。あれからもう半年経ったんですね」

「そうでした。G.N.ちゃんの離乳食自体、はじめるのを遅らせようか迷ってましたよね」

「あの時、普通に5、6カ月で離乳食を開始した方がよいこと、卵も少しずつ様子を見ながら与えた方がよいことをアドバイスしてもらって、本当によかったです」


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