2024年4月21日(日)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年6月4日

 徳島県の阿波踊りの主催者が、一部のスタンドにVIP席を設けたことが地元で賛否両論になっているという。VIP席といっても、当初発表されたのは100席限定で1万5000円という価格帯なのだが、地元住民からは「興行に走っている」などというと批判があったようだ。

(Buddhika Weerasinghe / ストリンガー/gettyimages)

 考えてみるとこうした「高価格=悪いこと」というマインドは、日本社会のあちらこちらに見られる。もっと言えば、こうしたマインドが日本の文化を追い詰めるような働きをしていると言うことも可能だろう。

自らの首を絞める事態

 まず、こうした祭りだけでなく、日本の演劇、演芸、舞踊、音楽、といった「パフォーマンス・アート」がジワジワと苦しめられているのを感じる。アートの中でも、こうした「公演、興行」というのは、固定費が高いし、場合によっては天候による中止などさまざまなリスクを抱えている。

 一番のリスクはチケット販売が不振な場合だが、反対に人気が高まって大入り満員となる場合は、追加で警備コストがかかる場合もあるし、転売屋が横行して混乱を招くこともある。同様なイベントとしては、スポーツも同じと考えていいだろう。今回の阿波おどりの場合は、主催団体が赤字を解消するための策として、VIP席の導入をしたわけであり、伝統存続のためには当然のことだ。

 一方で、世界的に見ると、こうした「公演もの」の文化が維持されていくためには、さまざまな工夫がされている。まず、催事や伝統芸能などでは、公的な助成が行われる。ヨーロッパでは、中規模以上の都市には常設のオーケストラと歌劇場があるが、公的な助成が前提となっている。


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