2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2023年4月12日

 NHKスペシャル「ジャパン・リバイバル “安い30年”脱却への道」(4月2日)は、〝安いニッポン〟のカゲで外国資本や人材を入れて変わろうとしている企業に光を当てた。

 ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー、食糧価格の高騰にもかかわらず、日本経済はデフレの余韻はとどまらず経済停滞と実質賃金の低下はとどまらない。円安が追い打ちをかけてニッポンは、マンション、中小企業、人材までもが〝安く買たたかれる国〟となっている。

(tampatra/gettyimages)

 「安い日本を買いたたけ!」――。NHKの大ヒットドラマ「ハゲタカ」の米国ファンドのマネージャー役の大森南朋が叫んだのは2007年のことだった。金融危機にまみれた日本の企業を米国ファンドは買いたたいた。

 あれから15年超を経て、デフレのなかで〝安いニッポン〟は企業のみならず、かつては技術立国日本といわれた企業を支えた人材までもが、外国資本に買われる時代を迎えている。

ベトナムにとっても「安い」日本

 ドキュメンタリーは、そうした新しい潮流を「ハゲタカ」と批判するのではなく、日本が変わるきっかけとなるのではないか、という視点に立っている。金融危機のなかで繰り広げられたM&Aや金融機関の破綻はあまりにもそのスピードが速く、その本質を明らかにするのにドラマが適していたのは事実である。ファンドが駆使する「ハゲタカ」の手法の数々を一般的な知識としたのにも貢献した。

 今回の取材班は、米国、ベトナム、中国、フランス、タイ、バングラデッシュまで、日本企業と現地企業の葛藤を目の当たりに見せてくれた。〝安い日本〟は買いたたかれるばかりではなく、世界各地の経済を揺るがしている様を描写している。

 日本向けの繊維製品の輸出国では第1位のベトナム。STXベトナム法人社長の家田洋輔(以下、敬称略)は語る。同社は最盛期には約2000人の従業員を雇用して、日本向けの商品の製造に取り組んだ。しかし、今は約500人まで削減している。同社がベトナムに進出してから30年が経つ。

 「高い給料を出せば、(従業員が)集まる可能性はある。ただ、それは製品コストに跳ね返る」と。

 ベトナムの国内総生産(GDP)は30年間で7倍になった。これに対して、日本の繊維製品の単価は1991年を100とすると、2017年には56%まで下がった。ベトナム人の給与を上げることは難しい経営環境である。


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