2024年7月18日(木)

田部康喜のTV読本

2023年4月12日

 バングラデッシュの首都・ダッカ。日本向けのファストファッションの仕入れをしている、蝶理のダッカ事務所長の松下友和は現地の製造工場との価格交渉に苦戦していた。

 松下は1枚の販売価格を800円と想定して、工場側に1枚につき1ドル65セントを提案した。工場側は1ドル70セントまでは降りてきたが、それ以上は無理で交渉は決裂した。

 松下は別の工場を訪ねた。工場側は「日本には1枚5ドルのTシャツもあるでしょう。私たちはもっと高い価格で買ってほしいんです」

 松下は次のように述懐する。

 「日本が本当に豊かな国で賃金も上がり衣料品もそれなりに出費できるんだったら、もっとここちよい商談ができているんでしょうね」と。

世界的に見ても低下する日本の経済力

 取材陣は、岩手県久慈市にある縫製工場に向かう。久慈ソーイング社長の中田輝人は、パソコンの画面に映し出された注文をみせる。「シャツワンピースが2000枚、ワークシャツが300枚」。「生産ラインが流れないので断った」と中田はいう。

 「あと2、3人の従業員がいれば注文に応じられる」。しかし、同社はこの20年間新人が採用できない。注文主が海外の工場に発注をかけてきたからだ。

 「海外からの回帰は、本当に都合のいいことだという感じが僕はします」と。

 「ジャパン・リバイバル」――〝安い日本〟30年から脱出して再び輝きを取り戻すにはどうしたらよいのだろうか。取材班は経済統計のなかで日本がいまどの位置にいるのかを冷静に分析している。さらに、東京都立大学経済経営学部教授の宮本弘暁(元国際通貨基金<IMF>エコノミスト)をコメンテーターに迎えて、日本が今後たどるべき道について考える。

 電子立国ニッポンや技術立国日本と呼ばれていたシニアと話していると、世界の中で日本経済の位置が今いかに低落しているのか理解してもらえない。日本経済の幻影の中で生きている人々は多い。

 いまだに1人当たりのGDPが世界のトップクラスと思い込んでいる人もいる。21年のそれは、OECD加盟国38ヵ国の中で下位の20位、しかも前年よりも1位落としている。

 東京都立大学の宮本は、バブル崩壊以降の日本企業の経営者についてきわめて辛辣な評価を下している。

 「バブル崩壊で企業がやるべきことはコストの削減だった。事業の大きな転換ができなかった。負債の圧縮が企業の至上命題となって、リストラ、コストの削減、製品価格を下げて〝価格競争〟に勝とうとした」

 「労働者は所得が増えずに消費者も豊かになれなない。負のスパイラルに陥った」と。

 米国の労働者所得は2019年に対前年で42%伸び、13年には58%伸びている。これに対して、日本は1995年に前年比マイナス23%、99年にはマイナス12%を記録した。

 日本は競争力ランキングにおいても、大幅に低下している。1989年から92年までには1位だったのが、2022年には34位。マレーシアの32位、タイの33位の下位に沈んでいる。


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