ヒトにカネをかけろ!
中小企業の町・東京都大田区は、中小企業の技術を海外と連携して活かせないか働きかけを強めている。大田区産業振興会協会がまとめた海外企業の日本進出は年間18件にのぼっている。協会リーダーの堀田祐はいう。「海外の企業の進出が増えると、大田区にとっても追い風になる」と。大田区の中小企業は最盛期に約9000件を数えたが、いまではその半分である。
中小企業がもっている技術が思いもよらない分野に応用の可能性が出てきた例がある。精密メーカーでのりの裁断機を52年にわたって製造してきた「クマクラ」の会長・熊倉賢一のもとに台湾の半導体設計企業であるシリコンポロジーの副会長・許博欽が訪ねてきた。
クマクラが持っている精密な裁断技術が、太陽光パネルの裁断に応用の可能性があるというのである。許は語りかける。
「台湾に太陽光パネルを作ろうとしている会社があります。クマクラの技術でパネルをカットする機械を一緒に作れる可能性があります」と。
都立大学教授の宮本は「経営者はいかなる状況にあっても利益をだしていく姿勢が求められます。投資や事業拡大、利益を上げること、これが企業の役割です。外国勢が日本企業に入ったとき、OECD加盟国で下位の競争力が向上する可能性がある」
「そのためには、人材に対する投資が必要だ。1990年代半ばから、日本企業が人材にかけるカネ、企業の積極的な経営が徐々に失われた。消極的になっていた」
人材投資にかける金額は2010年から2014年にかけて、日本は米国の20分の1になってしまった。「人にカネをかけないと、中長期的なスキルが伸びない。国の経済成長にプラスではない。しっかりとカネをかけるべきだ」と、強調する。
〝安い日本〟30年からようやく、政府、企業が目覚めようとしているようにもみえる。バブル崩壊前の日本経済の宴の“夢”から早く覚めないといけない。このドキュメンタリーは、日本経済に対する上質の「警告」である。
バブル崩壊以降、日本の物価と賃金は低迷し続けている。 この間、企業は〝安値競争〟を繰り広げ、「良いものを安く売る」努力に傾倒した。 しかし、安易な価格競争は誰も幸せにしない。価値あるものには適正な値決めが必要だ。 お茶の間にも浸透した〝安いニッポン〟──。脱却のヒントを〝価値を生み出す現場〟から探ろう。
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