2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月12日

5月20日、主要7カ国(G7)は「経済的威圧の事例が増えている」ことに懸念を表明し、初めて「経済的依存」を兵器化する試みに協力して反対すると約束した。

中国は多くの国にとり最大の貿易パートナーである。豪州を守ったような富と資源を持つ国は少ないが、多くの国は中国から豪州が逃げ出した教訓から学ぶことだろう。

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 このエコノミスト誌の解説記事は、豪州が新型コロナコロナウイルスの起源の調査を求めたことに中国が反発し、豪州に経済的圧力を加えたが、豪州の毅然とした対応により、何らの成果を収めず、かえって豪州の中国離れ、米英との安全保障強化などにつながったことを指摘したものである。

 中国は自由な市場経済国とは言えず、国家政策として、他国に何らかの圧力をかえるために、経済関係を使うことがある。豪州に発動した禁輸措置は豪州に損害を与えたが、経済関係は利益が相互に拡大する「プラスサム」の関係であり、中国側にも損害を生じさせた。豪州が中国に対抗し、今回中国側も経済的な威圧を解除するに至ったことは喜ぶべきことである。

G7は経済的依存を減らす方向へ

 かつて中国が、台湾のパイナップル、フィリピンのバナナ、ノルウェーのサーモン、チェコのビール、カナダの菜種などに輸入制限を課したのも、同じような経済的威圧であったのだろう。

 豪州は富と資源に恵まれた国であり、こういう対応が可能であったという面もある。より弱い国は豪州のように耐え抜くことが困難な場合もあろう。ただG7で「経済的威圧の事例が増えている」として、一国への「経済的依存度」を減らして、協力して経済的威圧に反対するとの約束ができたことの意義は大きいだろう。

 今後、中国が、「債務の罠」や輸出入への制限で他国の政策に圧力を加えることがより難しくなる効果が見込まれる。

 中国のTPPへの加盟願望を豪州がうまく利用したというのは賢明なことであり、TPPは予期されない効果を発揮していると言えよう。

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