妊娠6週目で中絶禁止
デサンティス知事は、妊娠6週目後の中絶を原則禁止する法案に署名した。共和党内には妊娠15週目ないし20週目後の中絶禁止を支持する議員や党員がおり、同党は統一したメッセージを打ち出せない状況に直面している。共和党テレビ討論会で、妊娠何週目後の中絶を禁じるのかが争点の1つになることは間違いない。
一方、トランプ前大統領は米連邦最高裁が人工妊娠中絶を否定したのは、大統領在職中に自分が3人の保守派判事を指名したからだと強調した。その上で、デサンティス知事の妊娠6週目後の中絶禁止の法案について、「厳格過ぎる」と批判した。
不法移民移送
デサンティス知事は移民問題についても、かなり過激な行動に出た。南部テキサス州にいる不法移民を昨年9月、富裕層が別荘を持つマーサズ・ビンヤード島(東部マサチューセッツ州)に飛行機で移送した。同知事は、テキサス州の不法移民がフロリダ州への移住を希望していたことを理由に挙げ、不法移民に寛容な対応をする「聖域都市」への移住計画の一部であったと説明した。聖域都市には民主党支持者が多い。
デサンティス知事は、バイデン大統領の移民政策への報復措置として、目に見える形で行動に出た訳である。さらに、不法移民を聖域都市に移送する移住計画を継続するために5月10日、1200万ドル(約16億7274万円)を州議会に求めた。
デサンティス知事が不法移民に対して、聖域都市への移送という強硬措置に出たのに対して、トランプ前大統領は同月30日、それを意識したのか、早速、対抗措置をとった。大統領に就任したら初日に、不法移民の子供に対して自動的な市民権取得を不可能にする大統領令を発令すると発表したのだ。米国籍を狙った「出生ツアー」で誕生した子供も対象になるという。
16年米大統領選挙で、米国とメキシコの「国境の壁」建設を政策の目玉政策にして勝利したトランプ前大統領は、今後も反移民政策を展開していくことは間違いない。
F16戦闘機の「パイロット訓練」よりも教師の「銃訓練」
ウクライナ問題に関してもデサンティス知事とトランプ前大統領のコメントを比べてみよう。
デサンティス知事はロシアのウクライナ侵攻に関して、「領土紛争」であり「米国の重要な国益ではない」と語り物議を醸した。トランプ前大統領はウラジーミル・プーチン露大統領を「戦争犯罪者」と呼ばない。米メディアの「ウクライナの勝利を望むのか」という質問に対しては、明言を避けている。これでは、トランプ氏はプーチン寄りだと解釈されても仕方がない。
また、トランプ前大統領はロシアとウクライナの国境ではなく、米国とメキシコとの国境問題にエネルギーを注ぐべきであると唱える。さらに、同前大統領はF16戦闘機のウクライナパイロットの訓練よりも、米国内の学校における銃乱射事件を防ぐために、全米の教師に銃を所持させ、彼らに銃の訓練を実施することに関心があるようだ。