2024年11月22日(金)

#財政危機と闘います

2023年6月16日

私たちの負担増はどうなるか?

 もし、岸田内閣が歳出改革に失敗するか、全額捻出できなかった場合には、当初報じられていた通り、全額もしくは一部の政策コストを社会保険料の上乗せにより確保される可能性もある。仮に、「異次元の少子化対策」の予算規模が3.5兆円だとし、歳出削減などで一部費用が賄われるとした場合、私たちの負担はどうなるかを見たものが下表である。

(出所)総務省統計局「家計調査(勤労世帯)」より筆者試算 写真を拡大

 筆者の試算によれば、平均的な家計でも、年間、最低1万円以上の負担増となる(なお、この数値は労使折半したものである)。また世帯主の年齢別に見れば、50~54歳の子育てが一段落した世帯で最も負担が重くなり、65歳以上の高齢世帯で負担が軽くなる。

 つまり、もし社会保険料の引き上げ(子ども・子育て拠出金でも実質的な違いはない)により財源を確保することになれば、現役世代の負担の方が重くなってしまうことに注意する必要があるだろう。

経済活性化は十分か?

 そもそもどんな政策を実行するにしてもコストがかからない政策は存在しない。必ず誰かがどのような形であれ政策のコストを負担することになる。岸田首相がなんと言おうともその原理原則は揺るがない。

 であるとすれば、やはり経済の活性化によって、私たちの手取り所得の増加による私たちの暮らしの底上げが欠かせない。

 「骨太の方針2023」には、「GX、DX、科学技術・イノベーション、スタートアップといった重点分野での大胆な投資拡大に向けて、長期的なビジョンを提示し、呼び水となる官の投資について複数年度でコミットするとともに、規制・制度措置の見通しを示すことで、民間の予見可能性を高め、民間投資を誘発していく」とある。どのように民間投資を誘発していくのか、具体的で効果的な施策が求められる。

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