2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年6月19日

 李中国特使の提案は、ロシアがウクライナ領土の20%近くを占領している現状をそのままにしたままで、まず停戦をしてはどうかというものであったようであるが、ウクライナにもウクライナ支援をしている欧州諸国にも到底受け入れられる提案ではなく、ウクライナと欧州諸国は明確に拒絶した。

 中国はこういう提案をすることで、ロシアの侵略とその成果を認める姿勢を示したが、これで仲介できると考えるのは中国の情勢判断能力に疑問を抱かせるものであると言わざるを得ない。さらに、今はウクライナが反転攻勢を加えようとしている時期であり、ピントの外れた仲介であると言わざるを得ない。

 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の頃に、習近平は中央アジア5か国の首脳を招いて中国陝西省西安市で首脳会議を開催したが、そこではこれら5か国の主権と領土の一体性の尊重をうたいあげている。この姿勢とも大きく矛盾する提案である。

行き当たりばったりの国になった中国

 最近、中国は状況対応型で原理原則のない国になり、信用できない国であると思わざるを得ないことが多くなった。北方領土問題についても、1964年、毛沢東が日本の立場への支持を打ち出したが、最近それを取り下げ、日本の立場を支持することはやめると言った。立場を平気でころころと変えるような国、首尾一貫しない国を信用するのは大きな間違いにつながる。中国を不信の目で見ることが必要と思われる。 

 欧州側が李特使の考え方に強く反発したのは当然であり納得できるが、ウクライナ戦争とそれへの対応を見て、欧州の対中不信や姿勢はより厳しくなると思われる。そのこと自体は歓迎できることであろう。

 フランスは、今なお中国のウクライナでの永続する平和への役割がありうるとしているが、何を念頭においているのか、理解しがたい。マクロン大統領の訪中の際の共同声明、その後のマクロンの対露、対米姿勢、特に北大西洋条約機構(NATO)や台湾問題に関する発言等には、要注意である。

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