クラスター爆弾が撃ち出す子爆弾は不発弾になることがあり、戦闘行為終了後にも、対人地雷同様に非戦闘員を爆発で傷つける可能性があり、その意味で無差別性を帯びている。クラスター爆弾禁止条約が123カ国もの批准で成立している状況は、こういう兵器は製造も使用もされるべきではないという規範意識が国際社会で広く共有されていることを示している。日本もこの禁止条約の締約国である。
ウクライナの反転攻勢に資するクラスター爆弾
しかし、ウクライナ戦争では、この禁止条約の締約国ではないロシアがウクライナに対しクラスター爆弾を使ったことは国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も確認済みである。さらに、ロシアはウクライナの反転攻勢を阻止するために長大な防衛線を地雷原や塹壕で何重にも築いている。ウクライナ側にクラスター爆弾があれば、それは広範囲の防衛線突破を可能にする有効な武器になる。反転攻勢の成功はこの戦争の早期終了に資するものであり、米国がクラスター爆弾供与に踏み切ったのは評価できるのではないかと考えられる。
戦闘終了後にこのクラスター爆弾の不発子爆弾が爆発し、民間人が傷つく可能性はあるが、その民間人はウクライナ人であり、ウクライナがその危険をも踏まえつつ、クラスター爆弾の供与を欲する以上、提供するべきであろう。
ロシアは民間人への無差別攻撃を避けようなどとはしておらず、その攻撃阻止、押し戻しこそ優先事項であろう。
ロシア側はメドヴェージェフ前大統領が、クラスター爆弾使用は「第三次世界大戦を意味する」と批判し、コサチョフ上院副議長は「最も非難される兵器を使わないとウクライナは何も達成できない」と言っているが、自分のこれまでの行為を忘れた妄言と言える。ロシアはクラスター爆弾提供を怖れていると見てよい。
なお、ウクライナには射程300キロメートルの長距離地対地ミサイル「ATACMS」を提供するのが良いように思われるが、それは今回のパッケージには含まれていないようである。