2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月24日

 バイデン大統領がウクライナへのクラスター爆弾の供与の決断を発表した後、米国内でも、さらには英国をはじめ同盟国からも異論が出ている。この件について米ウォールストリート・ジャーナル紙の7月9日付社説‘Biden Is Right on Cluster Bombs for Ukraine’は、バイデンの決断を支持している。社説の要旨、次の通り。

ベトナム戦争時のクラスター爆弾(Indigoai/gettyimages)

 バイデン政権が、ウクライナへのクラスター爆弾を含む8億ドルの軍事援助を発表するや否や、民主党員たちから、またいくつかの同盟国から攻撃された。われわれの批判は、この決断が早ければもっと良かったという点だけである。

 バイデンは、「大変困難な決定」であったと言う。クラスター爆弾は対人兵器で、広い地域に多数の小爆弾を発射する。この爆弾は非常に効果的で、ロシアは戦争の初めからウクライナ人に対して使ってきた。米国、ウクライナ、ロシアを含まない123カ国は、不発弾が戦闘終了後も何年も民間人に害を与えうるとの理由で、その使用を禁止する条約に署名している。

 不発小爆弾の率が高ければ、脅威はより大きくなる。ペンタゴンはウクライナに送るクラスター爆弾の不発弾の率は2.35%であると言う。ロシアのクラスター爆弾の不発弾率は40%にもなる。

 英国、カナダ、スペイン、ニュージーランドは、バイデンの決定を批判した。クリシー・フラハン(ペンシルバニアの民主党議員、不発弾についての超党派議会集団の共同議長を務める元空軍将校)は、決定は「道徳的な高み」をぼやけさせると言った。

 ウクライナはこれらの爆弾を民間人に使おうとはしていない。ウクライナは他の弾薬をほぼ使い切っており、ロシアが今なお保持する弾薬の量の有利さのいくつかを消したいと考えているのである。ウクライナの民間人へのより大きなリスクはロシアの侵攻軍と無差別な目標への照準設定にある。

 ロシアの侵略とウクライナの防衛のためのクラスター爆弾の使用の間の道徳的区別を付けられないようでは目が曇っている。諸リスクの間のトレード・オフについて決定するのに一番適しているのは、毎日その生命が脅かされているウクライナ人である。

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 バイデン大統領のウクライナへのクラスター爆弾供与はウクライナの強い要請に応じたものであり、現在のウクライナでの戦況に鑑み、必要であると判断したものであろう。


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