2024年11月22日(金)

勝負の分かれ目

2023年7月21日

 米国やイングランドにも匹敵するポテンシャルを備えるのが、FIFAランキング2位のドイツ。過去8回が行われている女子W杯で優勝を経験しているのは米国、日本、ドイツ、ノルウェーの4カ国しかない。その中で、4回の米国に次ぐ2回の優勝を記録しているのがドイツだ。しかし、前回は準々決勝でスウェーデンに敗れると、21年に行われた東京五輪の出場権も逃した。今大会に懸ける思いも強いだろう。

 日本と同じグループCから躍進を目指すスペインも、バルセロナ・フェミニ(バルセロナの女子チーム)が欧州チャンピオンズリーグを過去3シーズンで二度優勝するなど、注目を集める国の1つだ。昨年は優勝が期待された欧州選手権でイングランドに2-1で敗れて姿を消すと、主力選手たちがホルへ・ビルダ監督の戦術や采配に対する不安を表明し、同国サッカー連盟に退任を求めるなど〝お家騒動〟が勃発したが、今大会に向けチームはまとまり過去最強のメンバーで初優勝に臨む準備は整っているようだ。

 そのほか、東京五輪で金メダルを獲得したカナダやFIFAランキング3位のスウェーデン、世界最高峰のディフェンスリーダーとして知られる187センチメートル(cm)のDFワンディ・ルナール(リヨン)擁するフランス、そして開催国の1つであるオーストラリアあたりが優勝候補だ。

 また南米の強国であるブラジルは現在37歳で「これが最後のW杯になる」と宣言するマルタが6度目の同大会で優勝に導けば、世界的な話題になるだろう。ブラジルはFIFAランキング8位だが、欧米の列強よりテクニカルで、攻撃のリズムも異なるため、短期決戦で躍進していく期待は高い。

日本の〝躍進〟はあるのか

 日本の池田太監督は「もう一度世界の頂点を目指したい」と語る。その想いは選手たちも同じであるはずだが、11年の優勝監督でもある佐々木則夫技術委員長は現実目標としてベスト4をあげている。そうした結果を出せば、翌年のパリ五輪や次の女子W杯につながっていくというビジョンを描いているようだ。11年のなでしこジャパンの戦いを振り返りたい。

 佐々木監督が率いたチームは同年に女子のバロンドール(FIFA女子最優秀選手賞)となった澤穂希をはじめ、個性的なメンバーが揃っていたが、開幕前はやはりダークホース的な立場だった。グループステージの初戦でニュージーランドを破ると、メキシコにも澤のハットトリックなどで順当に4-0と勝利。この時点で決勝トーナメント進出を確定させていたが、首位突破を狙った3試合目のイングランド戦で0-2の完敗を喫してしまう。このままではまずいということで、中3日で来る準々決勝のドイツ戦に向けて、選手間ではかなり喧々諤々の衝突もあったという。

 それでも勝つためにチームがまとまり、優勝候補の開催国ドイツを破ると、グループステージで米国を破るなど、快進撃を続けていたスウェーデンに、川澄奈穂美の2ゴールなどで3ー1の勝利。そして米国との決勝では延長戦の終盤に澤のゴールで2-2に追い付き、最後はPK戦で世界一を勝ち取った。その最後のキッカーが現在のキャプテンを務める、当時20歳の熊谷紗希だった。


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