大会の中で成長しながら世界一に上り詰めたなでしこジャパン。11年の優勝は日本サッカー、いや日本のスポーツ界にとっての偉業だ。それはなでしこジャパンが当時の菅直人首相から国民栄誉賞を授与されたことからも明らかだろう。
ただ、偉大な記録はその後のチームにとってある種の〝呪縛〟のようなものにもなる。世界の女子サッカーが成長している中で、日本がどう挑んでいくのか。あまり過去の結果にとらわれずに観ていくことも大事だろう。
〝なでしこジャパン〟のここに注目せよ!
グループCに組み分けられた日本は初戦でザンビア、2戦目はコスタリカ、そして3戦目でスペインと対戦する。もちろんなでしこジャパンとしては2連勝で、首位突破をかけてスペインに挑みたいが、ザンビアは非常に不気味な相手だ。
23歳のFWバーバラ・バンダ(上海盛麗)は東京五輪のオランダ戦、中国戦で立て続けにハットトリックを達成して話題を集めた。そのバンダとスペイン女子リーグのレアル・マドリーで昨シーズン25得点をあげた左ウイングのクンダナンジが「Wエース」としてなでしこジャパンのディフェンス陣に襲いかかる。
一方で守備はこれまで列強相手に大量失点することが多かったが、5バックをベースにタイトなブロックを構築して、簡単には崩壊しなくなっている。バンダやクンダナンジを封じることができれば理想だが、しっかり複数得点を取って勝ち切りたい。
そのためには、なでしこジャパンの心臓である長谷川唯(マンチェスター・シティ)と長野風花(リバプール)のボランチコンビを軸に「ボールを奪う、ゴールを奪う」という池田監督の基本コンセプトを共有しながら、U-20女子W杯で準優勝の立役者となった藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)ら、アタッカー陣が自信を持って前に仕掛けていくことが重要になってくる。それと同時に、ボールを失った瞬間に素早く切り替えて、的確な守備に移れるか。これは生命線だ。
さらに鍵を握るのはセットプレー。現代サッカーでは得点の40%がセットプレーから決まるとも言われるが、特にW杯の初戦は大会独特の緊張感もある中で、セットプレーに占めるウェイトが高い。
長谷川唯なども優れたキッカーだが、スペシャリストである猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)の出番かもしれない。5-0で勝利した壮行試合のパナマ戦では直接FKがポストを叩いたが、最後は猶本のキックを相手GKが弾いた流れからダメ押しのゴールが決まった。