2024年11月25日(月)

勝負の分かれ目

2023年8月4日

 ただ、これまで大谷獲得の有力候補として各方面から名前が挙げられていたニューヨーク・メッツが球団方針の軌道修正により〝撤退〟する方向にシフトし始めたのは、二刀流スーパースターの去就に関する大きな変化と言えるであろう。それでもロサンゼルス・ドジャースやニューヨーク・ヤンキース、シアトル・マリナーズ、サンフランシスコ・ジャイアンツなど数多くの球団が今オフにFAとなる大谷の獲得を虎視眈々と狙っているともっぱらだ。

チームとして将来のための決断だったのか

 今夏のトレードが凍結となり、今季終了後の大争奪戦ぼっ発が必至とみられる中、その大谷の去就に関してエンゼルスが下した決断は果たして正しかったのか。

 今季のエンゼルスが逆転で9年ぶりのポストシーズン進出を果たし、21年ぶりのリーグ優勝、さらには同じく2002年以来のワールドシリーズ制覇まで成し遂げられれば、それこそ最高のエンディングだ。大谷も「強いエンゼルス」とともに来季以降も戦い続けていく意思を固め、FAにはならずチームに残留する可能性がグンと高まっていくと予想される。

 だが、エンゼルスにとって最悪のシナリオは最終的に今季のポストシーズン進出を逃し、今オフに大谷がFAとなって他球団に移籍してしまう流れだ。2日現在でアメリカン・リーグ西地区3位のエンゼルスは貯金3。同地区首位のテキサス・レンジャーズには6.5ゲーム差に引き離されており、地区優勝を狙うには現状でかなり厳しい位置にいる。

 ワイルドカード(WC)争いでは圏内3位のトロント・ブルージェイズと4ゲーム差だ。とはいえ現在のエンゼルスはWC7位で4位のボストン・レッドソックス、5位タイで並ぶヤンキースとマリナーズを追う立場であることも考えれば、WC争いはかなり熾烈でとても楽観視などできないだろう。

 左手有鉤(ゆうこう)骨の骨折で負傷者リスト入りし、離脱中のもう1人の主砲マイク・トラウト外野手の復帰が早ければ8月中旬と見込まれているが、まだこの先も大谷らエンゼルスの面々はトラウト不在の穴をカバーしながら戦い続けていかなければならない。

 そしてエンゼルスには大谷に固執する余り、将来のビジョンが不透明になりつつある状況も危惧されている。エンゼルスのファームシステム、傘下マイナーに属する選手層は「MLB30球団中で最低」と常々評されており、複数の米主要スポーツメディアからも同様の低評価を下されている始末だ。

 仮に大谷を今夏に放出する決断に踏み切っていれば「1対3」ないし「1対4あるいは5」の大型トレードで相手球団からトッププロスペクトの若手有望株をごっそりと手に入れることが可能だった。あえて厳しい言い回しをすれば、エンゼルスは球団の将来を担う〝ダイヤモンドの原石〟を数多く獲得できる千載一遇のチャンスをみすみす逃し、目先の大谷残留に前のめりになったともとらえることができる。


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