ボストン・レッドソックスに所属する吉田正尚外野手の活躍が目覚ましい。現地時間の5月7日に敵地で行われたフィラデルフィア・フィリーズ戦に「2番・DH」で先発出場し、この日も4打数2安打をマーク。チームは1―6で敗れて連勝は7で止まったが、これで自身は16試合連続安打となった。
初回一死の第1打席では芸術的な一打で米メディアをうならせた。相手先発はニューヨーク・メッツで昨季12勝をマークするなど大物右腕として知られるタイワン・ウォーカー。外角低目に投じられた90マイル(約145キロ)のスプリットはストライクゾーンいっぱいだったが、吉田はこれを巧みに拾い上げて右前に運んだ。
米スポーツ専門局「ESPN」は同日放送の番組内で吉田の打棒爆発について「ゾーンに入っている」と紹介。他の米主要メディアでも「マサタカ・ヨシダ」の名前が連日にわたって、ホット・トピックスとして大きく取り上げられている。
何しろ16試合連続安打は今季のMLB(メジャーリーグ)で最長だ。打率も7日の試合終了時点で3割2分1厘にまで引き上げた。
移籍時の評価をWBCでひっくり返す
レッドソックスの球団公式ツイッターやボストンの地元テレビ局「NESN」が吉田に関し、名前の「MASATAKA」と引っかけて「MASH(叩き潰す、乱打する)」の単語を用いながら無双の活躍ぶりを報じ始めていることも興味深い。この「MASH」が、吉田の新たなニックネームとして定着しそうな雲行きとなっている。だが、ここに至るまで決して順風満帆だったわけではない。
昨オフ、5年総額9000万ドル(約121億5000万円)の巨額契約を締結し、名門レッドソックス入り。昨季日本一のオリックス・バファローズからポスティングシステムを経て移籍した吉田には当初、その高額年俸を疑問視する声もMLB関係者や米国内のファンの間で少なくなかったが、今春参加の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で13打点を叩き出し、大会打点王に輝く活躍を見せて侍ジャパンの世界一奪回に大きく貢献したことで風向きが一変する。
象徴的だったのはWBCを終え、所属するレッドソックスのスプリングトレーニングに3月22日から再び合流した時のことだ。
同日にフロリダ州フォートマイヤーズのキャンプ地に到着直後、アレックス・コーラ監督から「you look tired(疲れているだろう)」と聞かれた吉田が「I am tired(疲れています)」と答え、両手を右頬に当てながら〝移動中にずっと寝ていた〟というジェスチャーを見せると周囲は大爆笑。そして互いに握手とハグを交わし、コーラ監督から「Congrats! Good job! I told you!(おめでとう! グッドジョブ! 言った通りになったな!)」と労をねぎらわれた。
この様子を収めた動画をレッドソックスの球団公式ツイッターが「WBCチャンピオンとしてキャンプに参加」と題して公開すると、米国内のフォロワーの間でも大きな反響を呼び起こした。