厳しい評価を跳ね返したマインド
ボストンの地元有力紙「ボストングローブ」が「マサタカ・ヨシダが、このチームの不良債権になる日はそう遠くないことかもしれない」と痛烈な皮肉を浴びせ、これに乗じるかのように手厳しいことで知られるボストンメディアの多くも吉田にバッシングを向け始めていた。
だが、吉田の心は動じなかった。スプリングトレーニングに参加していた時、吉田はこんな言葉を口にしている。
「いい時もあれば、悪い時もある。プレーしていれば、どうしても波は少なからずあるはずなんです。それをいかに少なくし、好調を維持するか。でも仮に不調になってしまったとしても、そこからどう這い上がっていくか、模索することも楽しめるようにしないといけない。壁を打ち破って、これから自分はさらに成長していくんだと。単に落ち込んだままだったら、本末転倒じゃないですか」
かくして吉田は、これを実践させた。4月21日の本拠地でのミネソタ・ツインズ戦で22打席ぶりの安打を放つなど複数安打をマークして以降、スランプの壁を打ち破って好調モードに突入している。23日の敵地ミルウォーキー・ブルワーズ戦では13試合ぶりの2号ソロ、さらに打者一巡で回ってきた次の打席でも3号グランドスラム。日本人選手では初となる1イニング2本塁打を達成し、MLBの新人では史上4人目となる快挙を成し遂げた。
批判を向けかけていた「ボストングローブ」を含む地元メディアは「レッドソックス史上最高のルーキー」などと手のひら返しで賛辞を送り、レッドソックスのチームメートからも「マサタカのような天才打者とともにプレーすることは誇り」(アダム・デュバル外野手)といった声まで出ている。
MLBの伝統球団レッドソックスで初の日本人野手としてプレーする吉田。地元ボストンのメディアやファンの目は相当にシビアなことで有名だが、その分だけ活躍すればハイリターンを得られる。厳しい環境下で戦い続けながら喝采を浴びている吉田の今後に世のビジネスパーソンもぜひ注目して欲しい。