2023年6月5日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年3月24日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 今回の野球の国・地域別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、コロナ禍後の「再開」という意味では成功だった。全日本も、USAも決して楽に決勝に進出したわけではなく、特に準決勝ではどちらも逆転劇を演じてスリリングに勝ち抜いて来ている。

 決勝も、1点差の引き締まった好ゲームだった。個人としても、全日本の大谷翔平、吉田正尚、村上宗隆、USAのトレー・ターナーら、旬の選手が輝きを見せたのも大きい。

WBCは日本の優勝という最高の形で幕を閉じたが、今後の日米野球交流への課題が生まれたとも言える(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 だが、このWBCの今後、そして日米の野球交流ということでは、さまざまな論点を感じるのも事実だ。日本チーム優勝の熱気の冷めないうちに、少し冷静に今後のことを整理しておきたい。

米国ではいまだ関心が向いていない

 まずWBCの今後という点では、まだまだ、未解決の問題が残っている。というのは、まだ米国の一般の野球ファンの意識としては、WBCへの関心が向いていないということだ。あくまで自分の応援するメジャーリーグ(MLB)のチームが勝って欲しいというのが最優先事項であり、WBCの位置づけには懐疑的というのが、米国の野球ファンの平均値である。

 一線級の投手には参加して欲しくない。例えば、大谷選手とマイク・トラウト選手の真剣勝負なども、「そんなことに熱心になるぐらいなら、一緒にエンゼルスを何とか強くしてくれ」というのが、アナハイムのファンの本音だろう。

 その意味で、日本とは違って、米国の一般の野球のファンはあくまで冷めている。今回もその点では、一線を超えた盛り上がりはなかった。


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