まだ余韻が冷めない。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2023」の決勝戦が3月21日(日本時間3月22日)に米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われ、野球日本代表・侍ジャパンは米国代表を3―2で下し、3大会ぶりの優勝に輝いた。
僅か1点リードの9回からクローザーとしてマウンドに上がった大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)が絵に描いたような劇的なラストを締めた。先頭打者を四球で歩かせるもギアを引き上げ、続く1番のムーキー・ベッツ外野手(ロサンゼルス・ドジャース)をセカンド併殺打に仕留めて二死無走者。ここで対峙したのは所属するエンゼルスでチームメートの盟友マイク・トラウト外野手だった。
球場全体から「USAコール」が鳴り響く完全アウェームードの中でも、冷静にトラウトを追い込むと、最後は外角スライダーでバットに空を切らせ、空振り三振。その瞬間、胴上げ投手になった大谷は被っていた帽子とグラブを侍ジャパンの三塁側ベンチの方向へ放り投げ、絶叫しながら喜んだ。守っていた自軍選手だけでなく、侍ジャパンの三塁側ベンチからもメンバーたちが一斉にマウンドの大谷のもとへと駆け寄り、歓喜の輪ができた。
大谷は試合後のセレモニーで大会MVPにも輝いた。花巻東高校に在籍していた今から10年前に、自身が「人生の目標」として書いた「WBCのMVP」を成し遂げた瞬間でもあった。
シーズン中には見られなかった一面
初めて参加したWBCでも全試合でスタメンに名を連ね、二刀流としてチームをけん引。打っては23打数10安打で打率4割3分5厘 1本塁打、8打点と大暴れした。
投げても防御率1.86で2勝0敗1セーブ。2度の先発に加え、決勝戦では63試合に登板したMLB公式戦の中で一度もなかった救援のマウンドに立ち、最高のエンディングでチームを世界一に導いた。
大谷がとんでもないモンスターぶりを発揮し、初参加のWBCでも素晴らしい活躍を見せたことは再三報じられているのであらためてここで振り返るまでもない。ただ、今大会では新たな一面を垣間見せ、それが自身の猛奮起にもつながる原動力となっていたことは、やはり特筆すべき点であろう。これはWBC期間中、侍ジャパン関係者や米メディアの間でも話題になっていた。