2024年4月26日(金)

勝負の分かれ目

2023年3月27日

 WBCに臨んだ侍ジャパンを通じ、大谷が現在のNPBを投打でそれぞれトップクラスに位置する「令和の三冠王」と「史上最年少・完全試合男」の若き2人に成長のためのエッセンスを与えた。いずれ近い将来、MLBに移籍するであろう2人にも世界を相手にしていく上で必要な術を植え付けた意味合いは、日本球界全体にとっても非常に大きいものと言える。

ショウヘイ・オオタニはどこまで行くのか

 米国を下して優勝を決め、表彰式が終了した直後のグラウンドでは北海道日本ハムファイターズ時代の恩師で侍ジャパン指揮官・栗山英樹監督をチームメートやスタッフらと一緒に9回、胴上げした。そして自らもサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手、ヌートバーとともに3回、フロリダの夜空を舞った。

 「間違いなく今までの野球人生の中でベストな瞬間だと思う」と振り返ったものの大谷は「今日勝ったからと言って、その目標が達成されるわけではない。これを1つの通過点としてもっともっと頑張っていきたい。シーズンがまた始まるので、そこに向かって日々努力したい」と自分に言い聞かせるかのように気を引き締め直した。

 エネルギッシュで感情を爆発させながらチームの主砲と先発投手、そして最後はクローザーと投打に渡ってフル回転。最後は盟友トラウトとの同門対決を三振に斬って落としてV投手になると、帽子とグラブを放り投げての世界一達成――。大会期間中に遺伝子を与え続けてきたチームメートの若侍たちと喜びを分かち合い、日本ハム時代からの恩師をWBC優勝監督へと導き、自らの宿願だった「WBC大会MVP」をもつかみ取った。

 まるでハリウッド映画の主人公のようなサクセスストーリーをWBCでも世に見せつけた大谷はエンゼルスに再合流し、3月30日(同31日)の敵地オークランド・アスレチックス戦で2年連続となる開幕投手として先発マウンドに立つ。果たしてWBC同様に「ヒリヒリするような」シーズンを過ごすことができるか。

 今オフはFAとなるが、チームがポストシーズンへ進出し、ワールドシリーズ出場まで狙えるような快進撃を見せることができれば、ウワサされる他球団への移籍も思いとどまる決断につながってエンゼルスに残留することになるかもしれない。WBC優勝後の大谷への注目度は青天井の勢いとなりそうだ。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る