2024年4月17日(水)

勝負の分かれ目

2023年5月9日

 この球団ツイッターのインパクトは効果覿面(てきめん)だった。今春のWBCでは決勝でオールスター軍団を結成して連覇確実との下馬評だった米国代表を打ち破ったこともあり、その立役者となった吉田の株は急上昇。3月30日に本拠地フェンウェイパークで行われたボルチモア・オリオールズとのシーズン開幕戦では「4番・左翼」でスタメンに名を連ねた。

 場内アナウンスとともにベンチからグラウンドに姿を見せると、ボストンのファンからはスタンディングオベーションで迎えられた。チームの開幕勝利こそ叶わなかったが、自身はこの日、メジャー初安打初タイムリーを含む2安打1打点。上々のデビューを飾った。

 さらに4月3日にフェンウェイパークで行われたピッツバーグ・パイレーツ戦ではメジャー初本塁打を放った。「4番・左翼」で先発出場し、2点を追う初回の第1打席で相手先発のキューバ出身右腕ヨハン・オビエドから96マイル(約154キロ)の速球をとらえて逆方向へ運び、左翼のグリーンモンスターを越える豪快弾を叩き込んだ。

 チームは乱打戦の末に6―7と競り負けたが、吉田の記念すべきメモリアルアーチにはレッドソックスの球団公式ツイッターが「ようこそビッグリーグへ、マサタカ・ヨシダ!」のコメントとともに動画を添付してツイートするなど各方面から称賛が鳴り止まなかった。

 この吉田の〝グリーンモンスター越えアーチ〟は米主要メディアの1つ「CBSスポーツ」でも「ヨシダの本塁打の打球は390フィート(約119メートル)も飛び、104.6マイル(約168キロ)の球速を記録した」と驚きをもって詳報された。同メディアは今季から5年9000万ドルの破格契約を結んでレッドソックス入りしたことにもあらためて触れ「彼については外部の意見として当初、コンタクトと出塁のスキルは高いもののパワーがそのまま反映されるかどうかは大きな疑問であり、守備や走塁の面ではあまり価値がないと考える向きもあった」としつつも「この日の夜のような爆発があれば、こうした懐疑的な見方を完全払拭できるだろう」との言葉で結んでいる。

初メジャー弾で雲行きが変わる

 ここまでは飛ぶ鳥を落とす勢いで、まさに「順風満帆」かと思われた。しかし、このメモリアルアーチを機に吉田のバットの勢いは徐々に失速していく。

 このメジャー1号弾を巡っては、思わぬ騒動もぼっ発していた。4月3日のパイレーツ戦で吉田のメモリアルアーチをグリーンモンスター上の席に座っていた少女連れの家族がキャッチ。球団側はチケットやサイン、グッズなどとの交換を条件に返還を求めたものの、その家族が応じなかったことで大きな波紋を呼び起こした。

 自身の記念球について吉田は「帰ってくることを期待している」とコメント。球団クラブハウスマネジャーのトム・マクフリン氏は「悲しいことだが、われわれは諦めた」との声明を出して事態の沈静化を図ったが、レッドソックスファンの間でSNS上における喧噪はますますヒートアップしてしまったのだ。

 奇しくも吉田はメジャー初本塁打を放った4月3日のパイレーツ戦での第1打席以降、6日の敵地デトロイト・タイガース戦まで12打席連続無安打が続くことになり、MLB関係者やファンの間から「ホームランボールが返還されないショックが要因」との見方をする声までまことしやかにささやかれるようになっていたほどだった。ツイッター上には吉田のメジャー初本塁打球をキャッチした少女連れの家族とみられる写真を掲載するユーザーまで現れ、大騒ぎへと発展した。

 4月6日のタイガース戦で吉田はマルチ安打を放ってトンネルを一時脱したかに思われたが、好調は維持できず12日の敵地レイズ戦試合前に右太もも裏の違和感を訴えて急遽スタメンから外れ、4試合欠場。16日の本拠地アナハイム・エンゼルス戦で5試合ぶりに復帰を果たすも祝砲代わりの安打が出ず、その翌17日に実現した相手先発のエンゼルス・大谷翔平投手とのメジャー初対決でも空振り三振を喫するなど4打数無安打1四球で3試合連続無安打に終わった。

 そして4月18日、本拠地フェンウェイパークで行われたミネソタ・ツインズ戦が終了した時点では惨憺たる成績に沈んでいた。当日は「4番・左翼」で先発出場したものの5打数無安打。バットからは4試合連続で快音が響かず20打席連続無安打となり、打率は1割6分7厘にまで落ち込んだ。


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