2023年12月7日(木)

2024年米大統領選挙への道

2023年8月22日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

共謀者の氏名公開か非公開か

 第2に、起訴状においてトランプ前大統領の共謀者の氏名を公開したか否かである。そこから検察側の意図が明確に読み取れる。

 ジャック・スミス特別検察官は起訴状で、米議会議事堂襲撃事件に関して、選挙結果を認定する公的な手続きを妨害するために、トランプ前大統領と共謀した6名の存在を指摘した。だが、スミス特別検察官は彼らの氏名を公開しなかった。

 その背景には、どのような意図があるのか。

 共謀者6名ではなく、トランプ前大統領の裁判にスタッフを動員し、時間とエネルギーを費やして、スピード審理を行いたいというスミス特別検察官の意図があるとみてよいだろう。同特別検察官は「トランプ有罪」を勝ち取ることを最優先し、それに集中したいのだ。

組織ぐるみの犯罪

 一方、ジョージア州フルトン郡のファニ・ウィルス地区検事(民主党)は、「威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法(RICO法:Racketeer Influenced and Corrupted Organization Act)違反とみなし、トランプ前大統領の元弁護士ルディ・ジュリアーニ氏、元大統領首席補佐官マーク・メドウズ氏および元ホワイトハウス弁護士ジョン・イーストマン氏等、18名の共謀者の氏名を公開した。

 起訴状によれば、トランプ前大統領と共謀者は、20年米大統領選挙におけるジョージア州の同前大統領の敗北を知りながら、違法に選挙結果を覆そうとした。例えば、ブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官に1万1780票を見つけるように圧力をかけた。同州では、ジョー・バイデン候補が1万1779票差でトランプ大統領(共に当時)に勝利したからだ。

 さらに、共謀者は大統領と副大統領を公式に選出する虚偽の選挙人名簿を作成した。不正に関与していなかったのにもかかわらず、選挙における犯罪を認めるように、集計作業に係った選挙職員の黒人の親子2人を脅迫した。

 では、なぜウィルス地区検事は、18名の共謀者の氏名を公開したのか。同地区検事は、20年米大統領選挙においてマフィアのような「犯罪組織」が存在し、組織ぐるみの大規模な犯罪が行われたという強いメッセージを発信することができた。また、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が指摘するように、18人を起訴すれば、複数の被告人と司法取引を結んで、重大証言を引き出せる公算が高まるという狙いがあるとみてよい。


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