2024年11月27日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年9月11日

 ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス、クリス・クリステイらは、ウクライナ支援が米国の国益となると説得力を持って主張した。他方、事前の世論調査では、50%以上の支持を得ているトランプや2位のデサンティス、更に第3位につけていた38歳のインド系ビジネスマンのヴィヴェク・ラマスワミはウクライナ支援の継続に消極的である。

 討論全般では、注目されたデサンティスの主張は歯切れが悪く、精彩を欠いた。これに対し、ヘイリー候補は、妊娠15週間経過後の中絶を禁止する連邦法案の成立が困難であることや、トランプ政権時代の共和党の方がバイデン政権よりも放漫財政であったことなど事実を率直に認め、トランプを米国で最も嫌われている政治家と明言した。

 注意を要するのは、若くして成功した実業家であるが政治的には無名の38歳のラマスワミである。討論会では、ウクライナ支援は、ロシアをさらに中国側に追いやることになるといったピントの外れた発言を行い、ヘイリーなどから外交経験がないことを示すものとして厳しい批判の標的となったが、それゆえに注目を浴びたともいえる。同氏は「米国が中国の侵攻から台湾を守るのは2028年まで(それまでに米国の半導体自給を達成する)」と発言し物議を醸したこともある。トランプを礼賛し支持しており、欠席したトランプの代弁者の役割を果たして副大統領候補を目指しているのではないかと見る向きもある。自らアウトサイダー候補と位置付け、既に根強い支持層があり、政治をエンターテイメントの一形態として扱うトランプのDNAを次の世代に引き継ぐ存在ともなりかねない。

トランプvsバイデンの構図が濃厚か

 第1回討論会の結果は、ほとんど状況に変化をもたらさなかったと言える。討論会後のロイター・Ipsosの世論調査では、むしろ共和党支持者のトランプ支持率は前回調査より5%伸びて52%となり、2位デサンティスの13%をはるかに引き離していることには変わりなく、ペンスが6%、ラマスワミが5%、ヘイリーは4%と報じられている。ウクライナへの支援継続に消極的なトランプ、デサンティスおよびラマスワミを合わせれば70%に達する。

 ウクライナ戦争に起因するインフレなどを背景として、7月のCNNの世論調査では米国民の55%、共和党支持者の71%が追加のウクライナ支援に反対との結果だった。トランプは自らの支持層である白人労働者層が反対しているので、これに迎合しているが、トランプに正面から歯向かえば保守層の支持を失うというジレンマにあるデサンティスも同様の立場をとっている。

 今回の討論会の結果からは、来年の大統領選の構図がバイデン対トランプの再現となる可能性が高まったように思われる。討論会の真の主役は欠席したトランプであったとも言えるだろう。

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