中国は必ず動く
東部ロシアはどうなるのか? 欧州に近いロシア西部では、欧州自由圏との交流が始まりその近接性が将来の政治形態に影響を与えるだろう。その際、ロシア東部へ欧州の自由圏が接近を試みようとしてもヨーロッパは遠い。このような形で国の分裂が始まると地政学上は危機的様相を呈する。
中国という専制国家がこの機会を最大限に活用しようとするはずだ。そうなると今のロシアはイデオロギーで東西に二分されてしまう。
ロシアの分割と崩壊は恐ろしい結果を産み出しかねない。そうなると「百年に一度の大変局」を世界政治の大舞台で主導しようとしている中国が当然干渉してくる。どう転んでもユーラシアの地政学はトンデモナイ方向に向かう危険がある。
しかしこの危険は識者によって先刻察知されている。ロシアの民主化を目指して行動している世界的に著名な二人のロシア人はフォーリン・アフェアーズ誌で「限定的な中央権力と強力な地方自治の二本立てで「ならず者独裁国」から議会制連邦共和国に変身する」という提案をしている(’Don’t Fear Putin’s Demise Victory for Ukraine, Democracy for Russia’ Garry Kasparov and Mikhail Khodorkovsky, Foreign Affairs, January 20, 2023)。
要するにロシア国内の地方国家に自治を許しながら、中央がロシアという一つの議会制連邦国家でまとめていくという発想だ。 そして、まさにこの両名が、もしロシアがこの民主化に失敗したら、ロシアは中国の属国になると危機感を表明しているのだ。民主世界は彼らの願望と危機感を軽視してはならないだろう。
最も当事者となるのは日本
とにかく、日本と欧米諸国はロシアの崩壊に備える必要がある。もちろん、中国ではどう対応するべきかを真剣に議論しているはずだ。
ロシアの崩壊は世界的な規模で非常に深刻な地政学的変更を生み出す。もっと重要なことは中国にとってはユーラシアにおいて勢力圏の拡大に繋がる。
西側諸国内で綿密な状況分析と対処策を検討するべきだ。そして自由主義を基調とする真に歴史的な新しいユーラシア地政学状況を生み出すために綿密な作戦を練り上げなければならない。日本の安全保障上最も深刻で重大な事態が生まれようとしている。日本が最も重要な当事者なのだ。