2024年7月27日(土)

勝負の分かれ目

2023年9月26日

 なぜ、これだけ5年前から後々に抜群の〝費用対効果〟へと結びつくドラフト戦略に踏み出すことができたのか。阪神の関係者は「ドラフトでは、いわゆるメディアに名前が踊るような〝話題先行型〟の固有名詞には極力左右されないように心がけ、徹底的にチームの補強ポイントのみにこだわった。あくまでもチーム編成に沿った形に絞り上げ、信念に則って徹底した」と打ち明けている。

大型補強路線からの転換

 つまり直近5年間のドラフト戦略は各年毎にコンセプトを設けたということだ。18年であれば「センターライン強化」(1位・近本、2位・小幡竜平内野手、3位・木浪)、19年は「将来を担う投手陣の主力候補」(1位・西純矢投手、3位・及川雅貴投手)、20年は「近々に優勝するための即戦力」(1位・佐藤輝、2位・伊藤将司投手、5位・村上、6位・中野、8位・石井)という重点項目を置いた。

 年度ごとにターゲットを鮮明にし、投手・野手と複数ポジションを満遍なく獲得するよりも目的に沿う形で見合った人材を積極的に上位で指名したのである。

 この直近5年間、フリーエージェント(FA)で他球団から補強したのは18年オフの前オリックスバファローズの西勇のみだった。10年代前半は米大リーグ(MLB)から福留孝介外野手や西岡剛内野手を獲得するなど大型補強が目立っていたが、明確なスカウティング重視の姿勢に切り替え、地道な土台作りに励んだ結果が実り、この23年シーズンで功を奏した。

 チームとともにフロントが「本当に求められているポイント」を短絡的な見方ではなく、中・長期的な判断で見定め、それが5年越しで結実したと言える。球界内で「リーグVを達成したタイガースのフロント陣のチーム編成プランは他球団も大いに見習う必要性がある」とささやかれるのも、当然の流れと言えるだろう。

消化試合に入っても手を抜かない

 加えて今季の阪神に「妥協なき強さ」がリーグV後の戦いにおいても全く色あせていないのは、特筆すべきところと評していいだろう。

 9月14日に本拠地・甲子園球場で行われた巨人戦で怒とうの11連勝を飾り、リーグ優勝。その後の〝消化試合〟も25日現在で9試合を3勝5敗1分とやや負け越してはいるものの、敗れたゲームに関しても全て2点差以内で相手に一方的に屈するような完敗の内容にはさせない。そのうちの9月24日・中日ドラゴンズ戦は敵地バンテリンドームで延長12回の末に0―0の総力戦ドローだった。もうリーグ優勝しているのだから勝敗に拘らず調整モードに入ってもよさそうなものだが、そうしたムードはレギュラーシーズンの残り試合を戦う阪神に微塵も感じられない。

 一体、なぜモチベーションを失うことがないのだろうか――。「独特の査定方式を導入しているからです」と前出の関係者は打ち明けている。


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