今年の関西は間違いなく熱い!「猛暑」よりも「猛虎」、プロ野球・阪神タイガースの好調が要因だ。46勝35敗3分けで首位でオールスターを折り返した。率いるのは、岡田彰布監督だ。
2008年、春先から首位を独走しながらも終盤に巨人の猛追を受けてリーグ優勝を逃すと潔いまでに身を引き、今季は15年ぶりの指揮官復帰だ。オリックスの監督や解説者、評論活動を経て、12球団の監督で最年長の65歳で迎えた「第2次政権」。05年以来となるリーグ優勝へ在阪スポーツ紙を連日、岡田語録がにぎわす「監督力」に迫った。
コンバートを即決
「早くも優勝ムードが漂っていますよ」。旧知の在阪スポーツ紙記者は鼻息が荒い。5月に球団の月間最多タイ記録となる19勝を挙げた一時の勢いには陰りが見えるものの、オールスター前の貯金は「11」となった。
今季の岡田阪神の好調の要因はいくつかある。一つは投手陣の安定だ。防御率は12球団トップの2.79。先発陣では、2年連続最多勝の青柳晃洋投手の不調を差し置いても、3年目の村上頌樹投手が6勝(5敗)をマークし、オフに初めて実施された現役ドラフトでソフトバンクから獲得した大竹耕太郎投手も7勝(1敗)を挙げて首位牽引の立役者に躍り出た。岡田監督も前半戦の総括で、2人の活躍を高く評価している。
注目したい「監督力」が守備にある。
中野拓夢選手の二塁コンバートだ。春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では負傷した西武ライオンズの源田壮亮選手の代わりに遊撃手に入って「世界一」に貢献したが、チームでは今季から二塁を守って好プレーを連発。ここに「岡田の眼」がある。
岡田監督は解説者時代、評論家の立場から選手の力量を常にチェックしてきた。昨季まで遊撃手だった中野の肩は強いとはいえず、一塁へ早く送球しなければいけない不安から守備位置が前寄りになってしまっていた。ヒットゾーンが広がる悪循環に陥り、失策も18に上った。ところが二塁に回れば、送球の不安がなく、フットワークを生かして二塁手としての肩なら深く守ることができる。
二塁レギュラーに固定された27歳は2番でシュアな打撃も光る。中野のコンバートは単なる思いつきではなく、解説者時代から「自分が監督なら中野は二塁で起用」という構想を練っていたからこそ、就任1年目でコンバートを即決できたのだろう。