ビッグチャンスが転がり込んできた。野球のメジャーリーグ(MLB)のオークランド・アスレチックスからボルチモア・オリオールズへ電撃移籍を果たした藤浪晋太郎投手のことだ。7月19日に若手有望株の傘下マイナー選手を交換要員とし、新天地へ1対1でのトレード移籍が急遽決定した。
MLB1年目のアスレチックスでは先発投手として開幕ローテーションに入りながらも思うような結果を残せなかったが、その後に配置転換された中継ぎでは落差の大きいスプリットと100マイル(約161キロ)を超えるフォーシームを軸とするリリーバー用の投球スタイルに〝モデルチェンジ〟を図ると、これが功を奏して並みいる強打者たちを翻弄。次第にアジャストし、MLB関係者の間でも評価を高めていた。
8月1日のトレードデッドラインが近づく中、リリーバーとして覚せいの兆しを見せ始めた藤浪に対して白羽の矢を立てたのがアスレチックスと同じア・リーグの東地区で首位争いを繰り広げ、9年ぶりのディビジョン制覇を狙うオリオールズだった。両リーグ最速で借金40を超えるなど既にポストシーズン進出の望みが絶たれているアスレチックスも今オフでフリーエージェント(FA)となる単年契約の藤浪を今が売り時と判断し、プロスペクトの若手有望株を交換要員として話を持ちかけてきたオリオールズからのトレード打診を受け入れた。
今季大低迷のアスレチックスから、MLBでも屈指の激戦区と言われるア・リーグ東地区において7月23日現在で首位を誇り、貯金23の強豪オリオールズへいきなりの電撃移籍となった。アスレチックスでは先発で結果を出せずリリーバー転向当初も回またぎで打ち込まれたり、制球が乱れた際には「通用しない」「メンタルが弱過ぎる」などと叩かれていたが、直近1カ月ほどの登板の中でアジャストに成功。それまで浴びせられていた罵詈雑言をシャットアウトさせ、地区優勝を狙う古豪チームへの移籍に伴い、一気に評価をガラリと変える好機が巡ってきた。一度は落ちぶれかけていた立ち位置から這い上がってくるというここまでの流れを振り返れば、それはまるで「シンデレラストーリー」のようだ。