指揮官は当初、藤浪について合流後数試合は新天地で慣れさせる意味合いも含め「プレッシャーのかからない場面で投げさせたい」と語っていたが、あっさりと前言撤回。それだけハイド監督が藤浪に対する期待値を高めている証拠とも受け取れるが、いずれにしてもアスレチックスでの〝ノープレッシャー・マウンド〟とはまるで比較にならない、ケタ違いの緊迫したMLB最高峰の戦いに今後身を置き続けることになったのだから当人にとってはまさに「激変」だろう。
巡ってきた日本人唯一のワールドシリーズ制覇
このMLBならではの「激変」を冒頭のようにビッグチャンスととらえ、飛躍に結びつけることができるか。藤浪はオリオールズへの移籍を「驚きが一番大きかった」と振り返り、地区優勝を繰り広げる上位チームへ戦いの場を移すことに関しても「注目されると思う。(アスレチックスでも)プレッシャーがかかる場面は多くあったが、さらに重圧はかかってくる。今から若干、緊張気味」と率直な気持ちを明かしている。
もちろん緊張しないほうが、おかしいだろう。しかしながら、それを乗り越えて成功をつかみ取れば、藤浪にはFAとなる今オフにビッグディールが舞い込む可能性も現実味を帯びて来る。オリオールズが大幅に条件をアップして再オファーをかけてくるか、あるいは他の常勝球団や資金力のあるチームからもラブコールが届くことになるかもしれない。
7月23日の現時点で藤浪は今季の日本人メジャーリーガーの中で唯一、現実的にディビジョン制覇を十分に狙えるア・リーグ東地区の首位チームに属している。ルーキーながら地区優勝、リーグ優勝、そして栄光のワールドシリーズ制覇へとチームを導くチャンスが巡ってきたのだ。そのチャンスをものにし、強豪オリオールズのメンバーとして今後尽力できるかどうかは、すべて藤浪の心構え次第だ。
世のビジネスパーソンも最高峰の檜舞台でスポットライトを浴びながら大きな重圧とも戦うオリオールズ・藤浪のマウンドに注目し、そこで〝奮投〟する姿を目に焼き付けてほしい。一度地獄を見かけた男がこれから這い上がって逆にスターダムへとのし上がっていこうとする生き様は、各々のライフワークにおいても何らかのヒントにつながっていくはずだ。