2024年7月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月2日

 とりあえずの問題は、ウクライナの反転攻勢が、ロシア軍への新しい弾薬の供給でさらに遅くなることである。これに対する策は、この社説が言うように、西側諸国もウクライナに対する弾薬の供給を増やすことである。

 米国は、従来懸案になっていた長距離ミサイルATACMS(Army Tactical Missle System)をロシア領土向けには使わないとの条件で供与することを検討していると報じられている(2023年9月22日付ロイター他)。これが実現すれば、クリミア奪還の動きを加速でき、歓迎できると思う。

 一方、より長期的な問題は、ロシアと北朝鮮のミサイル技術を含む軍事協力の進展であり、上記社説が指摘する通り、アジアの核戦力のバランスがそれでどう変化するかとの問題がある。

 ロシアはミサイル技術として変則軌道を飛ぶミサイルや極超音速ミサイルについて優れた技術を有している。それが北朝鮮に提供されれば、ミサイル防衛は役に立たなくなる可能性がある。そのうえ、潜水艦発射核ミサイル技術も対応が厄介である。

朝露の協力には日本に対するものも

 この社説は米国は核の傘がアジアの同盟国を保護すると確認すべきとしているが、バイデン政権がそうしても、トランプが次期大統領に当選する可能性が高い中、不安に思わざるを得ない点がある。ロシア・北朝鮮の取引の内容をできるだけ知るように同盟国とも協力して明らかにするとともに、日本としての対策も真剣に検討すべきであろう。

 非核3原則や核なき世界の理想を掲げただけでは問題はなくならないことを心底理解する必要がある。北朝鮮は昔も今もならず者国家である。マフィア国家と言われているロシアがこれに合流する事態は深刻にとらえるべきものである。

 金・プーチン会談では、北朝鮮の創立はロシアに根拠地を持った金日成の抗日パルチザンの偉業によるとの歴史も想起され、北朝鮮とロシアの軍事協力が日本に対するものとの示唆もあった。これは、日本にとっても、日米同盟にとっても、大きな影響を与えるものであり、昨年日本が決定した国家安全保障戦略等3文書の着実な実行とともに、国際戦略状況の変化に応じた早急かつ的確な対策が求められる。

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