2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月2日

 2023年9月13日付のEconomist誌が「ロシアと北朝鮮の取引がもたらす危険:ウクライナに困難をもたらし、アジアにおける核リスクを高める」との社説を掲載している。

2023年9月13日、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩委員長(代表撮影/ロイター/アフロ)

 金正恩がロシアに入りプーチンと会談した。二人の独裁者は、金が西側帝国主義に対する「聖なる闘い」と呼んだものに乾杯をした。両国の同盟は、ロシアに兵器の新たな供給をもたらし、ウクライナ戦争の様子を変え得る。また、アジアにおける核軍備競争をエスカレートさせ得る。

 北朝鮮は、ロシアが欲しがっている大砲砲弾を持っている。ロシアは昨年1000万発以上の砲弾を発射したと推定され、砲弾不足である。ソ連式軍隊を持つ北朝鮮は数百万の砲弾の在庫を持ち、もっと生産できる工業力を持っている。そして北朝鮮はロケットや榴弾砲などその他の兵器も供与できる。

 弾薬についての取引はウクライナの反転攻勢の微妙な時期に来る。今ウクライナは少なくとも大砲の戦争で対等を達成している。しかしロシアが弾薬を受けとると、ウクライナ軍をくぎ付けにし、その前進を更に遅くし、冬に消耗率のレベルを上げることができる。

 北朝鮮は代わりに何かを得たい。会談の場所、ボストチヌイ・コスモドロム宇宙基地は手がかりを与える。金は北朝鮮の核兵器の運搬システムの射程、信頼性、柔軟性を改善するロシアのミサイル技術を要求し、ロシアの衛星、潜水艦技術も入手したいとするかもしれない。

 取引のすぐさまの効果はウクライナ人兵士の仕事をより困難にするが、最終的にはアジアの核バランスを変化させうる。北朝鮮の政権は常軌を逸しており、邪悪である。定期的に韓国を燃やすと脅し、金・プーチン会談の直前にも2基の短距離弾道ミサイルを発射した。

 他の国はその軍事能力の向上を心配し、彼ら自身の武器の増強で反応するかもしれない。潜水艦から自由にミサイルを発射しうる北朝鮮は隣人を恐怖させるだろう。

 何をなすべきか。西側にとりロシアまたは北朝鮮への更なる制裁はほとんど効果がない。代わりにウクライナへの弾薬供給を増やさなければならない。また、ロシアと北朝鮮の武器取引について知っていることを公表し、米国の核の傘はアジアの同盟国を保護することを再確認すべきである。

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 このEconomist誌の社説はロシア・北朝鮮の首脳会談についての的確な分析を提供している。


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