2024年7月19日(金)

都市vs地方 

2023年10月11日

地価や家賃に反映される災害リスク

 人や企業についての防災対策として、直接彼らの立地をコントロールすることはできない。この場合、災害リスクとして判明している情報を十分周知し、各々の意思決定の下で災害への対策を促すしかない。

 こうした対策がどの程度機能しているのかは、災害が起きた後には判明するが、それでは遅すぎる。災害が起きる前に把握するための工夫が必要である。

 日本大学の中川雅之教授、名古屋大学の齊藤誠教授、関西学院大学の山鹿久木教授は、地価や家賃に含まれる情報を利用し、この困難を克服する方法を考えた。そこでは災害リスクとして、東京都が東京都震災対策条例に基づいて1975年から公表してきた町丁目ごとの地震に対する危険度指標を利用している。

 東京都はこの危険度指標を、市街地の変化を表す建物などの最新データや新たな知見を取入れ、概ね5年ごとに調査しており、2022年には第9回目の調査結果を公表した。第9回目の調査では、都内の市街化区域の5192町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、建物倒壊危険度、火災危険度、災害時活動困難係数および総合危険度について、町丁目ごとの危険性の度合いを5つのランクに分けて、相対的に評価している。

 こうした指標がもし人々に十分認知されており、人々が危険回避的に行動するのであれば、危険度の低い場所が人気に、高い場所は不人気になり、そうした人気は地価や家賃に反映されるはずである。中川教授らは、こうした危険度指標と東京都の公示地価や家賃の関係を実証し、地震に対するリスクが高い地域であればあるほど地価や家賃が低いことを示した。

 この結果から、災害リスクの情報が人々に認知され、人々がそれに対応して行動を変化させていることがわかる。観察された人々や企業の行動変化が防災リスクへの備えとして充分であるのかを注意深く検証する必要はあるが、政府の情報発信が人々に認知されていることが判明したことは意義深い結果である。

 災害の被害軽減を目指して政策を議論するのであれば、初めから視点や手段を限定してしまってはならない。考え得る限り多様な視点から、なるべく多くの手段を費用や効果とともに列挙して、比較検討する必要があるであろう。

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