2024年12月10日(火)

都市vs地方 

2023年8月4日

 2023年7月3日に23年(令和5年)分の路線価が国税庁から公表された。路線価とは、相続税や贈与税にかかわる土地の評価額を算出する際に用いられる地価のことで、公示地価の8割を目安に毎年国税庁が定めている。NHKの報道によると、全国平均で対前年比1.5%の上昇と、全国的に広い範囲で回復傾向が見られた

 特に、北海道、宮城県、福岡県のような地方の拠点となる大都市を抱えたところの上昇率は高く、それぞれ6.8%、4.4%、4.5%であった。東京都の上昇率も全国平均よりも高い3.2%で、この数字は関東地方の都県では最も高かった。

(AlexBrylov/gettyimages)

テレワークで郊外の価格が上昇傾向

 こうした結果から、一見、大都市の都心への回帰が生じているように感じられるが、より細かく見ると、単純にいわゆる大都市の都心に人や企業が引き寄せられているわけではないことがわかる。

 例えば、東京国税局各税務署管内(東京都と千葉、神奈川、山梨の3県)をみると、管内最高路線価の上昇率が最も高かったのは神奈川税務署(横浜市神奈川区と港北区)で、その最高路線価所在地は横浜市神奈川区鶴屋町2丁目、上昇率は14.2%であった

 さらに、2位に厚木税務署(厚木市と愛甲郡)、3位に千葉西税務署(千葉市花見川区、稲毛区、美浜区のそれぞれ一部と習志野市、八千代市)と、東京大都市圏の郊外の立地が並ぶ。

 それに対して、路線価の価格そのものでは最も高い中央区銀座5丁目およびその次の新宿区新宿3丁目の上昇率はそれぞれ1.1%および0.7%と全国平均を下回っている。

 路線価の様子からは、全体としては大都市に人や企業が集まりつつあるものの、その内部では都心というよりはいくぶん郊外に引き寄せられているようである。こうした動きをもたらしている要因の一つに、企業のオフィス需要の変化が考えられる。

 ザイマックス不動産総合研究所が実施した「大都市圏オフィス需要調査2022秋」によると、新型コロナ禍の影響が比較的収まったと考えられる2022年においても、7割以上の企業がテレワークを行う意向を示しており、オフィス需要もその意向を反映している

 実際、オフィス面積の変化についての質問に対して、拡張したと答えた企業の割合が5.4%であったのに対して、縮小したと答えた企業の割合は7.6%と、縮小した企業の方が多かった。


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