2024年5月17日(金)

都市vs地方 

2023年8月4日

 この傾向は21年春の調査以降続いており、新型コロナ禍によるオフィス需要の変化が長期化していることを示唆している。さらに、面積縮小の理由として、テレワークにより必要面積が減ることを挙げた企業も多く、何らかのテレワークする場所を整備していると回答した企業の割合は69.2%にものぼる。こうした働き方の変化がオフィス需要を変え、それが路線価に反映されたと考えられる。

急成長を遂げてきた大都市圏

 このような変化は、今後の大都市圏の盛衰に大きく関わる可能性がある。戦後の日本において、いわゆる大都市圏への人口集中が続いた結果、人口成長率よりもはるかに速いスピードで大都市圏は成長してきた。

 表1は、日本の都市圏の定義の一つである大都市雇用圏のうち、人口規模の大きいもの上位10個を、1965年から2015年まで示したものである。

 都市雇用圏とは、通勤によって結びついた市区町村を一つの圏域とみなしたもので、通勤パターンによって決められた中心都市と、そこに通勤する人が住む周辺地域によって形成される。都市雇用圏のうち、中心都市の人口集中地区人口が5万人以上のものを大都市雇用圏とよび、2015年国勢調査を基に設定された大都市雇用圏は100個存在する。

 過去半世紀にわたり、最も大きな大都市圏であり続けているのが東京大都市雇用圏である。15年にはその規模は3500万人を超え、東京都の人口が1300万人強であるので、その圏域は東京都だけでなく、周辺の県に広範囲に及ぶことがわかる。

 1965年から2015年まで、上位4つの大都市圏は変わらず、東京、大阪、名古屋、京都であり続けた。しかし、5位以下はかなりの変動がみられる。

 5位以下の都市圏には、変化をたどりやすくするため、福岡は薄青、神戸は薄赤のように、それぞれに色を付けて表示してある。これをみると、特に、九州においては、1965年には最大の大都市圏は北九州であったが、福岡が台頭し、75年には順位が入れ替わった。

 福岡はその後順調に規模を拡大したのに対して、北九州は鉄鋼業の衰退もあって伸び悩み、90年代には規模が縮小して、2000年代には上位10個から外れてしまった。仙台の成長も著しく、1975年までは上位10個に入っていなかったが、2015年には8位の規模に達している。

 1965年から2015年までの間で、日本の総人口は約9800万人から約1億2700万人へと1.3倍に増えた。もちろん、近年は人口が減少しており、05年に比べると、15年は77万人減っているが、それでも1965年に比べるとはるかに多い。


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