新型コロナウィルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に、季節性インフルエンザと同じ5類に移行した。これに伴い、法律に基づいた外出自粛などの要請が無くなり、個人の判断で感染対策を行うことになった。
もちろん、国による行動制限が撤廃されたからといって、新型コロナ感染症が無くなったわけではないが、さまざまな面で以前の日常生活に戻りつつあるといえよう。新型コロナ禍では、自由な行動が妨げられると同時に、ZoomやWebexといったリモートコミュニケーションツールが普及し、生活や仕事が大きく変容したように感じられた。こうした変化の影響はこれからも残り続けるのか、それとも、一過性のもので、近いうちに消滅してしまうのかに注目が集まる。
それに関連して、人口移動の変容もコロナ禍で取りざたされたことの一つである。特に、東京都からの転出超過が観察された時期には、東京一極集中緩和への期待から、多くのニュースで地方移住がクローズアップされた。
こうしたコロナ禍の人口移動への影響は今後も残るのであろうか。本稿では、コロナ禍前の人口移動の様子と比較することで、ここ数年どの程度人口移動が変化してきたかをまとめ、コロナ禍の影響がどう残りそうかを考えてみたい。ただし、個々の事例を取り上げるのではなく、ある程度大きな流れに焦点をあてる。
都道府県間人口移動パターンへの影響
図1は1カ月間に人口移動した人の総数を2018年1月から23年3月の間で示している。移動者数は総務省の「住民基本台帳人口移動報告」の数字であり、青線が総移動者数、オレンジ線が都道府県間の移動者数、グレーの線が都道府県内の移動者数である。
これをみると、新型コロナ禍が深刻化した20年から21年にかけても、移動者数はさほど変化していない。
もちろん、住民基本台帳の数字は住民票の情報に基づいたものであるため、住民票の移動を伴わない移動は反映されない。そのため、新型コロナを避けるために住民票をそのままにして一時的に移住した人の数は把握できない点は注意が必要である。