2024年5月6日(月)

都市vs地方 

2023年6月7日

 このグラフは、短期的な移住性向の様子ではなく、ある程度長い目で見た移住性向の様子であると考えるべきである。このグラフを見る限りでは、新型コロナ禍が移住に大きな影響を及ぼしたとは考えられない。

 都道府県間の移動を各都道府県の組に分解しても同様の傾向が見てとれる。図2は、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」の各都道府県間の移動者数(例えば、東京都から埼玉県への移動者数、大阪府から東京都への移動者数、のように移動元と移動先の都道府県の組み合わせごとに移動者数を算出したもの)の対数値を、コロナ禍前の19年とその後の年とで比較したものである。

 図の直線は45度線で、横軸が19年の移動者数の対数値、縦軸が比較対象年の移動者数の対数値である。45度線上に点があれば、19年と比較対象の年の移動者数が同じで、45度線よりも上側(下側)に点があれば、19年よりも比較対象の年の方が移動者数が多く(少なく)なっていることを示す。

 左上の図が19年と20年を、右上の図が19年と21年を比較している。これらコロナ禍にみまわれた2年とも、点は45度線周辺に集中している。さらに、左下の22年との比較でも、45度線周辺に点が集中している。

 全体として、人口移動のパターンは、19年とその後の3年間とで非常に似通っていると言える。ここでも新型コロナの影響は大きいとはいえない。

人口集中への影響

 地域間の移動パターン全体では変化は小さくても、東京都のように、日本全国から人を集めているような特殊な場所は、小さな変化の積み重ねとして大きな変化を経験しているかもしれない。その様子を確認するために、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」の都道府県転入超過数を19年から22年までで比較してみよう。

 転入超過数は、先ほどの図の移動者数を移動先と移動元の組ごとに差し引きして集計したものである。19年と比較して、21年には東京都の転入超過数は8万3000人から5400人へと大きく減少した。図3は、同時期に転入超過数の変化が大きかった20の都道府県の転入超過数を19年から22年まで示したものである。

 この図をみると、東京都の変化が際立って大きいことがわかる。19年の大幅な転入超過に対して、20年、21年には転入超過数が大きく減り、22年になると再び転入超過数が増えてきているものの、それでも19年の水準の半分程度にとどまっている。


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