2024年5月3日(金)

都市vs地方 

2023年10月11日

 2023年9月1日で、推定10万人以上の死者・行方不明者を出した関東大震災から100年が経過した。この間、日本は何度も大規模な地震に見舞われ、その度に大きな被害を被ってきた。

 現在の科学技術で地震の発生を抑えることは不可能であるし、予知も現段階では現実的とは言えない。そのため、政策的対応として、地震が生じた際の被害をいかに食い止めるかに焦点が当てられてきている。

(kanzilyou/gettyimages)

 実際、昭和から平成にかけて国会で議論されてきた首都機能移転の目的の一つとしても、災害対応力の強化が挙げられ、最近でも、例えば国土交通省の「企業等の東京一極集中に関する懇談会」において、首都直下地震のリスクが検証されている。本稿では、こうした地震に対する防災の議論において、都市や地域との関係で注意した方がよい点について整理してみたい。

「東京から移転」という問題ではない

 人や企業、政府機能が多く集中した大都市で大震災が起きると、被害が甚大になることが予想される。特に問題視されることが多いのが東京で、東京一極集中のために首都直下型地震の被害が大きくなると考えられている。それを避けるための方策の一つとして、首都機能移転などが議論されているが、その多くが東京への集中を何とかする、という視点にとらわれすぎている印象を受ける。

 もちろん、東京には人や企業が多く集まっている。図1には、2020年の国勢調査の人口および21年の経済センサスの事業所数のシェアの大きい方から上位10都道府県を示しているが、東京都はこれらのシェアが日本一高く、都道府県レベルでみて日本で最も多くの人口および企業が立地する場所である。

 しかし、大阪や愛知もシェアは十分高く、多くの人や企業が集まっている。例えば、東京から人や企業を追い出したとしても、それがそっくり大阪や愛知に移動してしまうと、今度はそこが災害に見舞われた時の被害が甚大になってしまう。東京への集中を何とかすればよい、という単純な話ではないのである。

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