2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2023年10月17日

予想される「米国第一」の実現

 現段階では、いずれのシンクタンクにおいても、まだ、青写真の全貌は見えてきていないが、概要については、米英各紙が以下のような点を報じている。

1.連邦政府機構の抜本改革

 これまで各省庁下では、選挙で選ばれてもいない官僚たちが、大統領の意思に反し無数の行政規則の発令・法解釈・指導に従事してきたとして、「第二次政権」ではこれらの官僚任せの行政を封印すると同時に、大統領の意向に沿った「中央集権化した強大政府」の確立をめざす。   

 他方で、トランプ主義とは相反する300以上の行政機関・組織を廃止・縮小する。その中には、石油、石炭採掘、森林伐採、河川工事などに規制を加える環境保護庁や、自治体主導の教育制度に干渉する教育省などの省庁も含まれるとしている。

2.〝ディープ・ステート〟の一掃

 トランプ政権発足当時、オバマ民主党大統領時代からの〝居残り組〟が陰で政府を動かしているとして〝ディープ・ステート〟の存在がやり玉に挙がった。その反省から、「第二次トランプ政権」では、各省庁合わせ4000人近くの「政治任命ポスト(political appointee)」の高官候補全員について思想面、活動歴などを厳格に事前審査し、「トランプ主義」信奉者のみで人事を固める。

 この結果、バイデン政権下で影響力を行使してきた約5万人規模の公職者、スタッフたちについても政府内から一掃され、極右保守主義色の濃い「トランプ専制体制」が確立されることになる。

3.「法と秩序」維持のための強権発動 

 独立した捜査権や司法判断を持つ現在の司法省の在り方に疑問を呈し、他の省庁同様に、大統領の指示通りに動くよう大改革に乗り出す。

 改革の下で、トランプ氏を米議会乱入事件扇動などの容疑で起訴に追い込んだ司法省を「バイデンの操り人形」だとして、その報復措置として、バイデン氏ら現政権首脳らの強制捜査に乗り出す。

 不法移民・難民たちを一斉に検挙し、軍隊を動員してでも強制国外退去させる。同じく各地の反政府デモや集会についても、軍投入による排除・鎮圧に躊躇することなく取り組む。 

4.「産業政策」の積極推進と反自由貿易主義

 国際競争で取り残されつつある南部、中西部の中小企業を救済し、労働者階級を共和党陣営に引き込むための大胆な財政出動を重視していく。

 この関連で、国内石油、石炭業界の新規採掘事業に対する規制は緩和、撤廃し、必要に応じて積極的に財政支援する。逆に、風力、ソーラー発電などのグリーン革命事業に対する国の支援は後退を余儀なくされる。

 通商面では、レーガン共和党政権時代が重視した自由貿易主義にもブレーキをかけ、国内産業保護のための輸入課税を実施する。

5.ウクライナ支援の縮小・打ち切り

 「アメリカ・ファースト」主義を唱導してきたトランプ氏の意向を反映し、「AFPI」政策立案チーム内では、ロシアの脅威を重視する一方で、ウクライナへの軍事・経済支援継続に対する慎重論が目立つ。

 有力スタッフたちは「われわれが心配しなければならないのは、ウクライナではなく、中南米不法移民による南部国境侵略だ」「ウクライナはわが国納税者の助成金でロシアと戦っているが、戦略的考慮を欠いた戦争助成は、米国の国益とは言えない」などと語っている。

 トランプ氏自身も最近、「ロシア、ウクライナ両国はただちに停戦に応じるべきだ」として、ウクライナのゼレンスキー大統領を暗に批判していることなどから、「ウクライナが米国からの支援継続を期待できるのは、(バイデン政権が終了する)2025年1月まで」といった期限設定論まで出ている。

 並行して、「第二次トランプ政権」発足と同時に、ロシア軍による占領地を現状凍結したままの即時停戦に向けたロシア・ウクライナ間調停工作をスタートさせる公算が大きい。 しかし、ウクライナ側や米欧諸国の多くが否定的立場であることから、実現の可能性は少ない。


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