2024年6月14日(金)

科学で斬るスポーツ

2013年10月1日

 スポーツ科学が専門の関西大学人間健康学部の小田伸午教授は「北島康介、寺川綾らを育てた平井伯昌コーチ(東洋大学水泳部監督、競泳日本代表ヘッドコーチ)ら有能なコーチの出現が強さの最大の理由だ。彼らは、体が小さい、筋力がないという日本人の短所的個性を生かして、欠点も長所にしてしまうという驚くべきコーチング能力を持っている。体の大きさ、筋力などの長所を生かしたやり方で成功する米国、豪州などからも注目されている」と指摘する。

アテネ五輪、北京五輪の100、200メートル平泳ぎ2種目連覇を果たした北島康介 (写真:アフロスポーツ)

 国内のスポーツ界では、暴力など強圧的に教え込む指導が問題になっているが、水泳のコーチングはこれとは対極にあると言えるだろう。

 「そうした競泳のコーチらは、自分で考えさせるコーチングは、強圧的なコーチングより、数倍も効果があるとの指導哲学を持っている」と小田教授は強調する。教育やビジネスにも通用することである。

「量」より「質」へ
科学的トレーニングの確立

 では、世界が注視する日本競泳界の科学的なトレーニングとは何なのか。

 科学的トレーニングと呼べる練習が始まったのは、1964年の東京五輪に遡る。ここでは、「100メートル30本、2分休んで5回」などの「インターバル練習」が行われた。質より量が重視された、いわゆるスポーツ根性論全盛の時代。しかし、東京五輪のメダルは1個に終わった。

 変革が訪れたのが1980年代。泳ぎのスピードとパワーを映像などで測定し、何が足りないのか、ターゲット目標を設定して、「質を重視する」手法に切り替わったのである。中央大学で始まったとされ、90年代を経て、今日の科学的トレーニングの礎になった。

 そして大きな前進が見られたのが、2000年以降。水中・地上カメラによる泳法分析の浸透、運動生理学、メンタル、コンディションニングなどの医科学的なサポートの拡大、科学的データを選手に上手に伝えるコーチ陣の台頭などが重なった。2001年に設立された国立スポーツ科学センター(JISS)もこの流れを後押しした。

 それが結実したのが、北島康介のアテネ五輪(2004年)、北京五輪(2008年)の100、200メートル平泳ぎ2種目の連覇。平井コーチ(当時東京スイミングクラブ)を含む、北島をサポートしたスタッフは「チーム北島」と呼ばれた。ビデオの分析などをもとに独特のフォーム改善に取り組んだ。


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