まず利用する映像について、現在は、JISSを所管する日本スポーツ振興センター・マルチサポート事業の一環として、ロンドン五輪に続き、リオデジャネイロ五輪における競泳パフォーマンス分析を担当する岩原さんは、(1)調子の良かったレースと悪かったレースの比較 (2)世界のライバル選手との比較――という。
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そして、その映像をスタート、ターン、ゴール、ラストに分け、それぞれの速度、ひとかき(ストローク)で進む長さ、ストローク数などを割り出し、それをもとにどこが遅いのか、抵抗が大きいのか、推進力がないのか、弱点をつかむのがこの手法である。
右のグラフや表は、今年の世界選手権男子100メートル自由形決勝で、優勝したマグナッセンら上位3人の泳ぎをビデオから分析したものだ。
こうしてデータで弱点をつかんだ後は、腕のかき方、スタートの仕方、ターンなど要素などに分けて、改善していく。各種目の改善したいところを細分化して、その動きを組み立て直す手法は「ビルド」とも呼ばれる。
「ここで大切なのは、個人の適した泳ぎ方に合わせて、効率的なフォーム改善を行うことだ。北島康介の場合、アテネではスタート、ターンの改善に取り組んだ。ここで推進力を確保したことが勝利につながった」と岩原さんは話す。
科学的分析を、選手にどう伝えるかが重要
日本人は欧米選手に比べ、体は小さい。その日本人も筋肉の付き方、体の組成、関節の柔らかさは個々で異なる。こうした個々の特性を見抜き、適正なコーチングができるのが平井コーチだ。
岩原さんは「平井コーチは、選手の練習メニューのバリエーションが多い。常に様々なデータを求めてくる。当初、このようなデータを活用できるのは平井コーチだけだったが、いまでは多くのコーチが利用できるようになった」と語る。
その平井コーチは、今年、東洋大学水泳部の監督に就任した。萩野ら有望選手が、平井コーチを慕って、同大に進学した。
平井コーチのすごさは、その言葉に凝縮される。