「科学的分析は大事。しかし、もっと大事なのはそれをどういうふうに伝え、選手が理解し、自分で考えることだ。選手の性格も考慮しながら伝え方に工夫する」という。
例えば、ロンドン五輪100メートル背泳ぎ銅メダリストの寺川は、お嬢様で、だれも厳しいことを言わなかった。しかし平井コーチは、特別扱いはしないと毅然と接し、練習方法も変えた。結果がでてきたのは、「本人が自分の価値に気づき、自主的に練習を始めたからだ。もっとできると思わせた。コーチとの信頼関係も増していった」という。
日本競泳界では燦然と輝く実績を残した平井コーチは、萩野ら有望選手のリオ五輪、東京五輪での連覇に照準を合わせる。
平井コーチは「萩野は、北島と似て慎重な性格だ。一つずつ確認しながら、前に進む。一足飛びに成長というわけにはいかなが、地道に成長するだろう」と今後の飛躍に期待を寄せる。
その萩野は、「練習メニューは平井先生に従う。自分の考えも取り入れながら目標を設定する」と語る。先の世界選手権では、多くの種目に出場し、疲れからか400メートル個人メドレーでは不本意の5着に終わった。
萩野は、「今回は、多くの種目に出場し、厳しい条件、疲労の中で、どこまで効率のよい泳ぎができるかを目標にした。(平井先生がいうように)究極の目標は五輪で勝つことであり、負けたのは悔しいが、今回はそのプロセスに過ぎない。苦手な平泳ぎ、バタフライに課題が見つかった。重点的に練習したい」と語る。目先にこだわらない、平井イズムが浸透していることを物語る。
平井コーチが所属する日本水泳連盟競泳委員会は5年前に、実力のある中高生をさらに伸ばすため「ジュニアエリート」制度を創設した。その1期生は萩野と瀬戸、平泳ぎの山口観弘ら1994年生まれの世代。今後、こうしたすでに世界のトップに君臨する選手たちと、その下の東京五輪を担うジュニア世代の強化が始まる。リオ五輪、東京五輪連覇できる選手がでるか。日本競泳陣の活躍は、今後も目が離せない。
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