2024年6月16日(日)

科学で斬るスポーツ

2013年10月1日

北島にあった究極の省エネ泳法

 水泳は他より速く泳ぎ、ゴールに達することで勝敗が決まる。速度を高めるには、前に進む「推進力」を大きくし、ブレーキとなる「抵抗」を小さくすることである。

 『泳ぐことの科学』(吉村豊、小菅達男著、NHKブックス)によれば、北島のすごさは、最も抵抗が小さくなるストリームライン(手足を一直線に伸ばした流線形)の美しさと、その持続時間の長さにある。その姿勢を維持するために推進力も確保しなくてはならない。

 そのため、平井コーチは、ビデオカメラなどによる泳法分析データを重視した。アテネ五輪で、JISSの研究員として、チーム北島に加わった岩原文彦さんは、「平井さんは、最も科学的データを重視したコーチ。我々のデータを北島の性格、特性をつかんで、うまく彼に伝え、フォーム改善に成功した」と語る。

 北島の平泳ぎは、(1)手を外側にかく時間を短くし、その分少なくなった推進力を、リカバリー(手を頭の位置に戻す)時の浮力で得ている (2)頭の位置を持ち上げずにキックし、体が反らないようにして、膝の沈み込みを防いでいる (3)脚の引きつけが小さく、キックが弱い分、小さく素早くやることでカバーしている――ことにある。効率性の高い、北島にあった究極の省エネ泳法と言えるだろう。そのため、調子のいいときは、手のかく(プル)数と、キック数が極めて少ない。腹筋、脚のキック力が求められることはいうまでもない。

北島の泳ぎ(下)は、頭を上げずに、脚をあまり引きつけないで、浅くキックしている。膝や腰の沈み込みが少ない。極力体を浮かせて、抵抗を抑えている。息継ぎでは、頭を上げずに、体が沈みこまないようにし、素早く腕を前に出し、浮力を得ている。ストリームラインに移行しやすい工夫が見られる。 (図は『泳ぐことの科学』より)
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 フォーム改造に、役立った映像(泳法)分析とはどんなものなのか。


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