2024年11月24日(日)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年10月1日

 義務を果たさない状態で、過重労働などの裁判になったときには、国で定めた最低限の安全配慮の法律すら守っていない企業というレッテルを貼られてしまうことで事業者が不利になることは間違いないでしょう。

――厚労省は「第12次労働災害防止計画」(平成25年度から29年度)を出しました。ここには重点とする職業性疾病対策としてメンタルヘルス対策を掲げており、取り組む事業者の割合目標を80%としています。現状はどうなのでしょうか。

佐藤:24年度の健康調査がこのほどまとまりました。それによるとメンタルヘルスに取り組んでいる事業所は47.2%で前年度より3.6ポイント上昇しています。着実に事業者の意識が高まっていると思えますが、このときの目標は60%でした。大幅に目標を下回っています。取り組む必要性は感じていても、やらない理由としては、取り組み方がわからない(31%)、専門スタッフがいない(22%)、というアンケート結果があり、注目されます。

 また、定期健診の実施率は81.5%でした。業種別にみるとサービス、小売り、飲食業が低いことがわかりました。問題視したいのは健康診断で有所見と言われているにもかかわらず、検査・治療を受けた労働者は48.3%という低さです。

 これが現状です。今回の12次労災防止計画の主なターゲットは、第3次産業です。労災件数が増えているので小売店、飲食店などへの指導徹底を図ろうという考え方です。それに加え、全業種を対象としてメンタルヘルスがあり、ストレスチェックの推進があります。

医師面談の体制などに課題も

――今後、実施されるストレスチェックが、どの程度の効果をもたらすか、推測できませんが、医師との面接までやると小規模事業者の負担は大きくなりますね。これで景気が腰折れするとは思えませんが、新たな負担増を不安がる経営者が出てくるのではないでしょうか。

佐藤:ストレスチェックそのものは健診と一緒に行えば、一人数百円ですので、問題ではないはず。ただ医師と面接などになると小規模事業者には、負担感が出てくる可能性があります。このことから国は助成金、補助金を出すべきという声があります。その方が取り組みをする事業者は増えるので、呼び水になる効果は期待できるのですが、そのような財源があるとは思えません。

 それよりも、50人未満の小規模事業場で働く人たちと医師との面接は、地域産業保健センターが受け持つのですが、現在の一施設平均の面接実績は月平均で2.7人ほどです。これが毎月30人~50人も出てきたらセンター側が対応できません。こちらの対策の方が問題だと思います。


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