2024年6月15日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年11月21日

 新華社の報道を見ても、会談内容より、バイデンが三十数年前にサンフランシスコで撮られた習近平の写真に言及したり、国家主席専用車「紅旗」を褒めたなど、米国が習近平に配慮していると強調したものが目立った。また、習近平が400人近くの米国財界人の参集した夕食会で3回のスタンディング・オベーションを浴びたことを、「両国交流史の中で最も暖かく感動的」(新華社)と報じている。

 だが会談の直後、両国の根底にある深刻な溝が露呈した。バイデンは記者会見後の追加質問で、「米国と異なる政治形態の国家を率いる人物という点で、彼(習近平)は独裁者だ」と、あからさまに発言した。この際、ブリンケン国務長官は一瞬顔をしかめ、キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官は薄笑いして素知らぬふりをしたことが、両者の立場の違いを示唆したようで印象に残った。

 ブリンケンは「米中が異なる政治システムなのは明らかで、大統領は率直に話をしている」とフォローし、面子を潰された中国は、16日の外務省報道官会見で「完全な誤り。極めて不適切かつ無責任な政治操作で、断固反対」と述べたが、習近平がマウントをとったような両国融和をすでに喧伝していた手前、それ以上の言及を避けた。

 バイデン発言の背景には、米国民の84%が中国に否定的(2月ギャラップ調査)な中で、米国の対中姿勢が基本的に変化していないことを、自国、さらには同盟国、そして何よりも中国に示す必要があったと考えられる。会談自体は「これまでで最も建設的で実り多い対話の一つ」として、協議達成の政治的得点に満足を示したが、一方でフェンタニル問題をめぐっても「古い格言『信頼せよ、されど確認せよ』が前提」と述べるなど、両国の本質的な競争・対立関係は何も変化していないことを覗わせている。

 現に米国側は、半導体や対中投資に関する規制を緩める気配は見せず、最大の目玉であった軍事対話にしても、機能的・実用的なものとなるのが容易でないことは織り込み済である。一方で習近平は、APEC首脳会議での演説で「経済貿易問題の政治化・武器化に反対する」、「両国は責任ある態度で正しい方向性に関係を発展させるべき」と述べて米国を牽制している。従って、今回の米中首脳会談の本質とは、双方がとりあえず得たいもの得て、互いに必要とする間合いや時間を稼ぐためのものでしかなかった、と解釈すべきであろう。

具体的成果の見えなかった日中首脳会談

 対照的であったのが、何らの具体的成果も見られなかった日中首脳会談である。17日(現地16日)に開催された会談では、まず習近平が「『戦略的互恵関係』の位置づけを再確認し、新たな意味あいをもたせ、新時代の要求に合致した両国関係の構築に尽力すべき」と切り出し、岸田文雄首相は「次世代のため、より明るい日中関係の未来を切り開けるよう、力をあわせていきたい」と応じた。

 この「戦略的互恵関係」とは、2006年に当時の安倍晋三首相が胡錦濤国家主席との間で合意し、08年には親中派代表格の福田康夫内閣時の日中共同声明に盛り込まれたものである。ただ、その中身は具体性に欠けた曖昧なもので、ゆえに便利な標語となってきたが、両国関係の悪化を受けて20年以降は使用されてこなかった。

 しかし、今回の首脳会談で習近平がこの標語を持ち出したことには、重大な意味がある。すなわち中国側の認識としては、現在の日中間の力関係を十数年前と比較すると、明らかに自国の「強大化」で立場は異なるものになっており、その現実を見据えて相互の「位置づけを再確認」せよと求めているのである。


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