2024年7月18日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年11月21日

 そして、この前提条件の変化を再確認した上で、「新時代(=中国の時代)の要求に合致した両国関係の構築」を日本側に要求しているものと考えられる。この意図を理解しているのかどうかは不明だが、会談後に岸田首相は「建設的かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を習主席との間で確認した」と述べている。

 結局、両首脳が合意できたのは、上記の「戦略的互恵関係」に加え、経済協力で成果を出せるよう日中ハイレベル経済対話を適切な時期に開催し、また日中輸出管理対話の立ち上げを歓迎するという件、さらには東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出について、建設的な態度で協議と対話を通じて問題解決の方法を見出すという件の3点のみであった。

 しかし、あとは日本側の一方的要求にとどまり、中国側は明確な反応を返すことがなかった。すなわち、処理水放出に関連した中国側の日本産食品輸入規制の即時撤廃、中国で拘束されている邦人の早期解放、尖閣諸島沖の排他的経済水域に設置された中国側ブイの即時撤去、ロシアとの連携による日本周辺での軍事活動への懸念、などの課題である。それどころか習近平は、前日の米中首脳会談でバイデンから台湾問題を牽制された意趣返しか、今度は日本に対し、台湾は両国間の政治的関係の基礎にかかわり、これを損なわないようにするべきと牽制する始末であった。

現代中国の対日観を反映

 会談後に岸田首相は、「全体を振り返り、一定の手応えを感じている」と述べているが、会談中には拳で机をたたきながら熱弁したにもかかわらず、中国側からは適当にあしらわれ、肩透かしにあった印象である。もっとも、これは外務当局には想定の範囲内であろうし、財界も含めた利害関係者が重要と考えるのは、日中間・首脳間の曖昧模糊とした「対話の継続」で、実際には最初から認識の共有や問題の解決などは、期待していなかったと言えよう。

 一方の中国は、もはや日本などは米国に従属する「三下奴」に過ぎず、米国との関係さえ安定させておけば、どうにでもなるとしか認識していないのが現実である。これを日本の朝野も認識できていないことは甚だ問題であるが、すでに中国の目から見た日本は対等の相手ではなく、格下の存在でしかない。それでも首脳会談に応じてみせたのは、短期的には、現在の国内経済状況では日本との経済関係が安定化していることは自国の損にはならず、また中長期的には、日米離間と日本の取り込みを諦めてはいないからである。

 それ故に、習近平から提起された「戦略的互恵関係」の再定義・再構築とは、実は深刻な意味を持っているのである。すなわち、現代中国の対日観や世界秩序再構築の戦略に基づく形に巻き込まれないよう、あるいは、これを曖昧にしてかわし続けるのか。それとも日本からの再定義・再構築として、中国に斬り込むような新たな形を突きつけ、これに巻き込もうとするのか。

 そのように考えると今回の日中首脳会談は、具体的成果はなくとも、確かに「新たな意味あい」を持つものではあったのかもしれない。

※本文内容は筆者の私見に基づくものであり、所属組織の見解を示すものではありません。

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