2024年12月22日(日)

プーチンのロシア

2023年11月17日

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、10月7日、イスラエル南部にかつてない大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルの民間人と兵士1400人以上を殺害し、240人以上を拉致した。当然イスラエル側は反撃する。衝突は長期化しているが、その人道上の惨劇の背後で世界各国による国際的な得点争いが行われている。これが国際政治の現実だ。

 どうやら現時点ではロシアと中国が得点を稼いでいるとみられている。どういうことか?

(Pridannikov/gopixa/gettyimages)

ゲインしたロシア、利用する中国

 ロシアはこのハマスのテロのお陰で、自分のウクライナ侵略批判が世界的に薄れるとみている。それに西側からの軍事支援がイスラエルに向かう分、ウクライナへの軍事支援が減るとみている。

 その限りでは、ハマスのテロはロシアにとってゲインだ。ただ、米国のオースティン国防長官は、米国がウクライナと中東で軍事的役割を同時に果たせると述べている(「プーチン氏は、イスラエル・ガザ戦争で得をするのか」スティーヴ・ローゼンバーグ、BBCロシア編集長、2023年10月14日)。

 中国もこの悲劇を政治的に利用しているようだ。記録によれば、10月の国連安保理事会で米国の決議案に拒否権を使用し、その際、中国の張軍国連大使は「各国は地政学的な計算やダブルスタンダードに執着するのではなく道徳的な良心を守るべきだ」と論じた(China and Russia Claim Moral High Ground Over Palestinian Deaths - WSJ)。

 その上で「これは米国の外交政策の失敗だ」と批判。要するに中国にとっては欧米諸国を道義的に非難し、世界中の貧困国、非同盟国と連帯する絶好の機会が突然飛び込んできたのだ。中国にはプラスの展開だ。

 しかし私見では、中国こそ「地政学的な計算やダブルスタンダードに執着するのではなく、道徳的な良心を守る」べきだ。新疆ウイグル自治区での100万人以上のイスラム教徒を弾圧している。その上、巧妙な弁舌とは裏腹に中国には中東和平に果たす能力は無い。


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