2024年5月19日(日)

プーチンのロシア

2023年11月17日

 中国と中東関係の専門家であるオランダのフローニンゲン大学のビル・フィゲロア助教授は、今回の中国の対応は「中国は中東問題における巨大な立役者であるというプロパガンダに穴を開けるのは間違いない」と述べている(「焦点:中国、中東緊迫でも動けず 野心の限界露呈か」James Pomfret、Joe Cash、Chen Lin, 2023年10月12日)。要するに中国が道義を語る域には達していないことを示している。

 得点争いは国際政治では当たり前だ。しかし得点争いを超越するべき時だと論ずる人も出てきた。しかもそれはイスラエル人だ。

 世界的に高名な歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏はこう言っている。「イスラム原理主義の残虐行為は決して許されないが、イスラエル側もパレスチナとの和解を放棄し、数百万人のパレスチナ人を何十年も占領下に置いてきた。自分たちは強いと思い込んできた。これも厳しく非難されるべきだ。イスラエルは今後、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力が願われてやまない」と。(『イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」』

今後西側が目指すべき新展開

 目の前で展開する中東の緊急事態に関して、プーチン大統領が大きな貢献はできないだろう。ウクライナで足を取られているからだ。

 しかし西側は事と次第では、ロシアを中国に対抗する勢力に転身させることができるという地政学上の図柄の大きな議論が出てきた。ロシア問題の専門家として令名の高いトーマス・グラハム米国外交評議会主任研究員の意見だ(’What Russia Really Wants-How Moscow’s Desire for Autonomy Could Give America an Edge Over China-’Thomas Graham ,Foreign Affairs ,October 9, 2023)。

 その議論を筆者なりに整理するとおよそ次のようなものだ。

 進行中のロシアによるウクライナ侵略の結果がどうなろうと、つまり仮にロシアが敗北したとしても、ロシアという国が世界の舞台から姿を消す訳ではない。ウクライナ戦争の後、西側は北の巨人ロシアとどう生きていくかを決めなければならない。

 ロシアは18世紀以来、伝統的に自国の国益を見定め、それに従って独自の外交をしてきた。それは「戦略的自己主張」(strategic autonomy)と呼ぶべきもので、西側はこれを意識してロシアに対しては賢明にアプローチするべきだ。

 例えばロシアが専制中国に対抗していくことがロシアの「戦略的自己主張」だと認識すれば、西側とロシアは共同歩調をとることができる。西側はそういう方向性でロシアとの対話を深めるべきだ。 


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