中東におけるイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘激化を背景に、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン政権が息を吹き返しつつある。中東の不安定化をめぐり、「西側が背後で糸を引いている」とプロパガンダに利用し、欧米諸国のウクライナ支援疲れが鮮明になるなか、来春の大統領選への出馬をする意向を固めたとも報じられた。ロシアはハマスとの接触や、民間軍事会社「ワグネル」を通じたイスラム過激組織への支援を進めている可能性も報じられており、目に余る無法ぶりを見せている。
このままプーチン氏が権力基盤をさらに固めることになれば、ウクライナを支援してきた欧米諸国には、かつてない厳しい打撃になりかねない。一方のロシア国内では、ソ連崩壊以後に芽生えた民主主義の芽が、完全に根絶やしにされそうだ。
「西側が仕掛けた」
「西側は、反イスラム、反ユダヤ、そして反ロシアの政策を総動員させて、世界を分断しようとしている」
「そのような勢力は、暴力と憎しみの拡大から利益を得ている。それは中東だけではない。ユーラシアでも同様だ」
「そして中東での紛争をお膳立てて、国家主義と宗教的不寛容を世界中で煽り立てて、その勢力(西側)は、明らかに、私どもの国に対しても打撃を与えようとしているのだ」
ロシアのプーチン大統領は10月25日、クレムリンにロシアの宗教指導者らを集めて、イスラエルとハマスの戦闘が激化する状況についてそう解説してみせた。プーチン氏の主張はあまりに一方的で、理解が困難だが、意を介さないようにプーチン氏はこう続けた。
「このようなゴール(ロシアに打撃を与えること)は、それらの国々の指導者により、あからさまに述べられている。ロシアに、〝戦略的敗北〟を与えるということだ。これは、何も新しいことではない。彼らは、中東での紛争を望んでいる。それ以外の、あらゆる宗教的、民族的戦争を望んでいる。それらは、直接的、非直接的に、ロシアに結び付けられる。それはつまり、ロシア、そしてその社会に、打撃を与えるということなのだ」
「だから彼らは、ウソと扇動で、ロシア社会を分断し、民族的、宗教的争いをロシアにおいて、引き起こそうとしているのだ」
このような話を、まともに理解することは困難だ。しかし、プーチン氏の言葉からは、ひとつのメッセージが伝わる。
つまり、〝西側はロシアを憎んでおり、ロシアにおいて中東のような紛争と分断を引き起こそうとしている〟――とプーチン氏が主張しているということだ。ウクライナ侵攻を続ける自国を正当化するために、プーチン氏が現在の中東情勢を利用する姿が鮮明に浮かび上がる。