2024年3月1日(金)

プーチンのロシア

2023年11月13日

 欧州連合(EU)も、約束した砲弾提供が進んでいない実態が報じられており、ウクライナは、極めて厳しい状況に追い込まれていると言わざるを得ない。

プーチン政権に与えた〝正当性〟

 ウクライナと欧米諸国の足並みが乱れるなか、プーチン政権は攻勢をかける。ロイター通信は11月6日、プーチン大統領が来年3月に行われる大統領選に出馬する方針を固めたと報道。プーチン氏の再出馬は既定路線と言えるが、すでに2000年の大統領就任から超長期政権が続くなか、プーチン氏の続投を〝正当〟だと国内外に誇示する必要があり、その裏付けが必要だった。

 そのためには、ウクライナ侵攻でロシアが劣勢に追い込まれていないという条件が最低限必要で、そのような条件が整ったとのプーチン氏の判断があったとみられる。

 ロシア政府はさらに、プーチン氏がウクライナ侵攻開始以後、中断していた年末の大記者会見も開催すると表明した。これも、大統領選再出馬と、現在のウクライナ情勢をめぐる状況が背後にあることは明らかだ。

ハマスと連携か

 中東情勢が、ロシアへの強い追い風になっている構図は鮮明だ。しかしロシアは一方で、今回の戦闘激化の背後にいるとの疑いもぬぐえない。

 イスラエルに攻撃をしかけたハマスの代表団は10月26日にロシアを訪問し、ロシア外務省の幹部らと次々と会談したと報じられた。ハマスを支援するイランの外務高官もモスクワを訪れ、ハマスと協議した事実が浮かび上がっている。

 さらに、ハマスによる急襲の直後にイスラエルに攻撃をしかけたレバノンのシーア派民兵組織ヒズボラに対し、シリアのアサド政権がロシア製の移動式防空システムを提供することで同意したとも報じられた。アサド政権は、ロシアの介入で反政府勢力を抑え込み、政権の座を維持している経緯があり、ロシアと極めて緊密な関係にある。さらに、その防空システムの輸送を、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が担う可能性があるとも伝えられている。

 中東情勢を足掛かりに、息を吹き返しつつあるロシアのプーチン政権。ウクライナに戦争を仕掛け、中東での混迷もあらゆる角度で利用するその姿勢からは、同政権の性質が鮮明に浮かび上がってくる。

 プーチン氏の思惑が実現し、同氏の権力基盤がさらに強固になるなら、自由主義陣営にはかつてない厳しい打撃になることは必至だ。一方でロシア国内では、ソ連崩壊後の民主化の歩みは、完全に途絶えかねない。

 ウクライナ侵攻、中東情勢にどのように対応するか。事態は緊迫の度を高めており、自由主義を標榜する国々は、重大な岐路に立たされている。

   
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